episode 41 ページ44
.
「Aに会いたい!!この前やっと会えたのに突っ走っちまったせいでまた会えねえし!!仕事で紛らわしてついでに休み作ってあいつに使おうと思ったけど無理だ!!Aが足りねえ!!会いたい!!会わせろ!!!」
……えー、と。
そのAがここにいるんですが……。
頑張れってこういうことか、とセンラさんの笑みを思い返す。
目の前で「会いたい」連呼されてこれどうすればいいの。センラさんのふりしとく?
「会いたいなら、連絡したら……」
「できたら苦労しねえんだよ!言っただろ別れる直前俺が何したか……。なんかお前の声さっきからAみてえだな、いよいよ俺やべえわ」
「……本物です」
教えた方がいいような気がして言った。
「あ?」
横目で見てくるうらたさん。しばらく顔に焦点を当てていたが、そのうち視線が下りた。
上半身を起こして、私の首元を指でなぞる。
「本物なら、ここの跡はどうしたんだよ。強くつけてやったから薄くても残ってるはずなのにねえぞ」
「道理で濃いと思いました……!コンシーラーとか色々使って頑張って隠してるんです!」
意図的だったんならあの赤さも頷ける。過去の彼氏にもつけられたことあって隠し方は知ってたけど、かなり苦労した。
いきなりつけるにしろ、こういう見えるところはやめてほしいものだ。
「……隠した?それじゃ意味ねーじゃねえか」
「首にキスマつけて大学行く人がどこに……」
「落とせ」
「え?」
「落とせ。他の男が寄り付かねえようにつけたんだ、見せびらかせよ」
「…………」
独占欲丸出しみたいなこと言うんだな……熱でおかしくなってるんだろうな。
私はうらたさんの肩を押した。弱っている彼は簡単にベッドに沈んだ。
「具合悪いのは分かったので寝てください。薬飲みました?てか食べたのかなそもそも……しまった聞いとけばよかった」
独り言を言いながら鞄から財布を出す。3000円と小銭がいくらか。
必要になりそうなもの買ってくるか。鞄を持って腰を上げると、不意に手を握られた。
「ここにいろ。出てったら許さねえからな……」
瞼が閉じかけたまま私の目を見つめる翡翠に、一歩も動けなくなった。
そして彼は眠りに落ちた。
――こんな弱い力で繋がれたって、振りほどけないわけがないのに。
口の中が甘くなるほど。
「意味わかんないんですけど……」
不安定な、寂しそうな
引きずり込まれてしまう――。
1071人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「歌い手」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
エス(プロフ) - ノアさん» いやー!!続きが楽しみですね!一生付いてきます!これからと体は気をつけて更新ゆっくりでもいいので頑張ってください!それと続き編ありがとうございます! (2020年8月27日 20時) (レス) id: 3190ad61df (このIDを非表示/違反報告)
ノア(プロフ) - ミルクショコラさん» 夏休みですか!最高ですよね!!短いのは残念ですが、是非とも満喫してください^^* (2020年8月27日 18時) (レス) id: 17af415a1e (このIDを非表示/違反報告)
ノア(プロフ) - エスさん» そう言っていただけて嬉しいです!私もどうなるかわかりません笑 これからもお付き合いくださると嬉しいです! (2020年8月27日 18時) (レス) id: 17af415a1e (このIDを非表示/違反報告)
ノア(プロフ) - 東雲さん» こちらこそありがとうございます!!長らくお待たせ致しました(汗) 続編移行したので是非これからもよろしくお願いします! (2020年8月27日 18時) (レス) id: 17af415a1e (このIDを非表示/違反報告)
ノア(プロフ) - わかさん» 私がきっかけなんですか!?めっちゃ嬉しいですありがとうございます……!これからも頑張ります! (2020年8月27日 17時) (レス) id: 17af415a1e (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:ノア | 作成日時:2019年9月5日 19時