episode 35 ページ38
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今夜連れていってくれたそこは、新しくイルミネーションがついて噂になっていた噴水広場だった。
「おお……」
めちゃくちゃ綺麗!女はイルミネーション好きみたいな、枠にはめられるのは嫌だけど、実は結構好きなんだよね。
テンションを上げると子供っぽいので落ち着いたふりをしつつ、頬が緩むのを感じる。
まじですごいな……超綺麗。
坂田さんも見とれてるかなと隣に視線を移せば、彼はイルミネーションではなく私を見ていた。
「坂田さん見ないんですか?綺麗ですよ?」
「……俺も綺麗なもん見とっただけやけど」
「…………」
どういう、意味だろう。
坂田さんは真顔。つまり真面目に言っているのだが、綺麗なもの……後ろを振り返ってみてもそれらしきものはない。
首を捻ることになり、坂田さんは少々眉根を寄せた。
「何が“そろそろいける”や……全然効いてないやないか志麻くん……」
独り言を言って小さく嘆息する。志麻くん?
「誰ですか?」
「……変な奴の名前や。覚えんでええ」
「はぁ」
わけはわからないが、覚えないようにした。
……てか、カップル多いな。
あちこちでイチャイチャしている人たちは嫌でも視界に入り、うらたさんとのことを思い出させてくるので非常に迷惑だ。
『男』だった彼を思う度、変に胸が苦しくなる。
――ああもう、考えるな私!
「お前って写真よく撮るか?」
「……写真、ですか?」
「そこら辺の奴らがめっちゃ撮ってるから」
坂田さんは軽く辺りを見回した。内カメでツーショットを撮っているカップルたちの話をしているようだ。
物珍しげに赤い瞳に彼らを映す坂田さん。
興味あるのかな。あんまり写真撮らなそうだし。
私自身、人から言われないと撮らないけど。
「撮ります?私たちも」
「ほんま?」
声の調子が上がった。しかし彼が次に発した「まあどっちでも構わんけど」は冷静そのもので、聞き間違いかとも思う。
ひとまず写真を撮ることにした。が、撮る側になったことが無いに等しいので、スマホを持つ手が安定しない。
「こんな感じでいいのかな……すみません慣れてなくて」
「俺もわからん。こっち支えとくな」
「ありがとうございます。じゃあ……待って、坂田さんイケメンすぎる、加工消します」
「……おう」
3秒タイマーを設定してシャッターボタンを押す。
坂田さんが無表情なので私も笑わないでいたら、唐突に坂田さんが言った。
「お前の顔、俺は好きやけどな」
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エス(プロフ) - ノアさん» いやー!!続きが楽しみですね!一生付いてきます!これからと体は気をつけて更新ゆっくりでもいいので頑張ってください!それと続き編ありがとうございます! (2020年8月27日 20時) (レス) id: 3190ad61df (このIDを非表示/違反報告)
ノア(プロフ) - ミルクショコラさん» 夏休みですか!最高ですよね!!短いのは残念ですが、是非とも満喫してください^^* (2020年8月27日 18時) (レス) id: 17af415a1e (このIDを非表示/違反報告)
ノア(プロフ) - エスさん» そう言っていただけて嬉しいです!私もどうなるかわかりません笑 これからもお付き合いくださると嬉しいです! (2020年8月27日 18時) (レス) id: 17af415a1e (このIDを非表示/違反報告)
ノア(プロフ) - 東雲さん» こちらこそありがとうございます!!長らくお待たせ致しました(汗) 続編移行したので是非これからもよろしくお願いします! (2020年8月27日 18時) (レス) id: 17af415a1e (このIDを非表示/違反報告)
ノア(プロフ) - わかさん» 私がきっかけなんですか!?めっちゃ嬉しいですありがとうございます……!これからも頑張ります! (2020年8月27日 17時) (レス) id: 17af415a1e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ノア | 作成日時:2019年9月5日 19時