episode 22 ページ24
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Aは不意を突かれたように目を見開いた。
視線を宙にうろつかせ、たどたどしく言葉を発する。
「それは……すみません。でした」
沈黙が流れる。
坂田は強い後悔に襲われた。
――悟られてしまうと格好がつかないと、適当に突き放すだけのつもりだったのに、やりすぎてしまった。
そもそもの話、駆け引きができるほど恋をしてきていない。己の義務にしか関心を払ってこなかったのが仇となった。どうすればAは同じ感情を持ってくれるのだろう。自分は次に何をしたらいい。
「……その、坂田さん、最後の最後って言ってましたよね。私を使って敵を倒す作戦は終わったんですか?」
「お、おお」
よく覚えているな、と驚きつつ答えれば、Aの眉が下がった。
「じゃあ、もう会えませんか?」
悲しげな、惜しむような声色。
坂田には解る。Aのそれに、特別な意味などはこもっていないことを。
だがそれにしても、
「
全力で唇を閉じた。Aにはなんとか隠せたらしい。不思議そうに坂田を見上げている。
坂田は冷静さを取り戻して、言った。
「会えるんやないん。夜は俺の時間やから、そん時来たらええで」
「どこにですか?」
「…………」
考えていなかった。
「どっか。ほんまはあんまフラフラされても困るねんけど」
「あ、そうですよね……」
小さく唸りながら考えるA。
そこに坂田は、一つ解決案を打ち出した。
「だったら連絡手段持っとくか?したらいつでも連絡できるやろ」
スマホを見せて、Aに提案する。
これなら、Aと時間や場所を決めて会うことができるようになるし、そうでなくても、連絡を取り合える。……実は後者の目的が過半数を占めていることは言わないが。
坂田の思惑を知る由もないAは素直にその提案に首肯した。
「はい!ありがとうございます」
Aは喜びを露わにして笑った。
こんな笑顔を見たら、自分に少しは気があるんじゃないかと期待してしまう。
……いや――
「それでお前あれか?何もせず帰したんか?」
「ああ。女が出歩くには遅い時間やったしな」
「っはーーー、アホ。お前ホンマのアホやな……」
心底呆れたような長いため息をつかれ、坂田は「は?」と理解のできていない反応で返した。
と、坂田のスマホが懐で振動する。
画面を見て口元を緩める坂田に、志麻は呆れを通り越した笑みを浮かべた。
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エス(プロフ) - ノアさん» いやー!!続きが楽しみですね!一生付いてきます!これからと体は気をつけて更新ゆっくりでもいいので頑張ってください!それと続き編ありがとうございます! (2020年8月27日 20時) (レス) id: 3190ad61df (このIDを非表示/違反報告)
ノア(プロフ) - ミルクショコラさん» 夏休みですか!最高ですよね!!短いのは残念ですが、是非とも満喫してください^^* (2020年8月27日 18時) (レス) id: 17af415a1e (このIDを非表示/違反報告)
ノア(プロフ) - エスさん» そう言っていただけて嬉しいです!私もどうなるかわかりません笑 これからもお付き合いくださると嬉しいです! (2020年8月27日 18時) (レス) id: 17af415a1e (このIDを非表示/違反報告)
ノア(プロフ) - 東雲さん» こちらこそありがとうございます!!長らくお待たせ致しました(汗) 続編移行したので是非これからもよろしくお願いします! (2020年8月27日 18時) (レス) id: 17af415a1e (このIDを非表示/違反報告)
ノア(プロフ) - わかさん» 私がきっかけなんですか!?めっちゃ嬉しいですありがとうございます……!これからも頑張ります! (2020年8月27日 17時) (レス) id: 17af415a1e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ノア | 作成日時:2019年9月5日 19時