episode 2 ページ3
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「しまった……」
元バスケ部で足腰が強いせいか、随分長い距離を歩いてしまった。冷静になると、引き返す道のりは行きよりも長く感じる。
この辺明かり少ないな。夜8時でもこんな暗いのか……覚えとこう。
「ぎゃ……」
微かに、妙な声を聞いた。何かに口を覆われているような、くぐもって掠れた声。
立ち止まって辺りを見回してみるが、人も車もない。細い裏路地が少し先にあるくらいだ。
裏路地は真っ暗で、どこまで続いているかすら分からない。
こういうの、関わらない方がいいよね。でもすごい苦しそうな声だった……。全然見えないけど、あそこで誰か倒れたりしてるかも。
……行ってみるか。
私はスマホの「懐中電灯」をオンにし、裏路地を照らしながら足を踏み出した。
――瞬間だった。
「……え」
人工の光を浴びて浮き上がる、サングラスをかけた黒服の男たちと、傍らで一際目立つ赤髪の男。
彼の足元には、その髪色よりも赤黒い血溜まり。
地面に倒れている人がいて、その人から流れた
……しん、でる?じゃあさっきのは、「ぎゃ」って声は、もしかして……。
身が竦んで頭が真っ白で、赤髪の男が距離を詰めてきているのに気付かなかった。
眼前に来てようやく気付き、直後――唇を奪われた。
「!!」
反射で拒絶しようと口を開けると、まるで予期していたかのような早さで相手の舌がねじ込まれる。私の頭を掴む手のひらに耳を塞がれ、頭の中にキスの音だけが響いてぞくぞくする。息が上がる頃にはもう蕩かされてしまっていた。
危険だと解っていても、快楽には勝てない。反抗する気力を全て失い、彼の舌に翻弄される。
ごくん。と、喉が鳴った。
「……!?」
何、飲んだ。――飲まされた。
答えを求めて男を見るが、冷徹な深紅の双眸に吸い込まれそうな感覚を覚えるだけで、そのうちに意識はなくなってしまった。
赤髪の男は眠りに落ちたAを片腕で受け、空いている反対の手を懐に入れた。
出てきたその手に握られていたのは――スマホ。
『もしもし?』
「情報屋。今から女の写真を送る。5分以内に住所を特定しろ」
『はいはい、りょーかい。女の写真ねぇ……もしかして坂田、致しちゃった?』
「気ぃ変わった。1分で特定しろ」
『え……まぁできんこともないしええけど』
「……住所が分かったら送ってこい、じゃあな」
通話を切り、赤髪の男は浅く息を吐いた。
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エス(プロフ) - ノアさん» いやー!!続きが楽しみですね!一生付いてきます!これからと体は気をつけて更新ゆっくりでもいいので頑張ってください!それと続き編ありがとうございます! (2020年8月27日 20時) (レス) id: 3190ad61df (このIDを非表示/違反報告)
ノア(プロフ) - ミルクショコラさん» 夏休みですか!最高ですよね!!短いのは残念ですが、是非とも満喫してください^^* (2020年8月27日 18時) (レス) id: 17af415a1e (このIDを非表示/違反報告)
ノア(プロフ) - エスさん» そう言っていただけて嬉しいです!私もどうなるかわかりません笑 これからもお付き合いくださると嬉しいです! (2020年8月27日 18時) (レス) id: 17af415a1e (このIDを非表示/違反報告)
ノア(プロフ) - 東雲さん» こちらこそありがとうございます!!長らくお待たせ致しました(汗) 続編移行したので是非これからもよろしくお願いします! (2020年8月27日 18時) (レス) id: 17af415a1e (このIDを非表示/違反報告)
ノア(プロフ) - わかさん» 私がきっかけなんですか!?めっちゃ嬉しいですありがとうございます……!これからも頑張ります! (2020年8月27日 17時) (レス) id: 17af415a1e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ノア | 作成日時:2019年9月5日 19時