7こ ページ8
その日から僕らは毎晩のように勉強会をひらいては、空いた時間に事件についてノートに記した。
ヒーローノートほど冊数が増えることはないが、それにしてもかなりのペースでページが埋まっていく。
所々ふざけて描いたイラストがあって、それもまた面白い。
そんなこんなで2週間ほどたった頃、ついに僕らの想像力に限界がきてしまった。
『やっぱ想像だけじゃムリがあるねー』
「最後らへんなんてもう適当だもんね」
『でもそろそろ事件起きそうじゃない？
早ければ来週か、再来週あたり』
事件が起きてほしいわけではない。
しかし、このまま何の手がかりも掴めず犠牲者が出るのだけは避けたい。
この二週間で思考した内容が、何かの助けになったらいいのにな…
『イズクは優しいね』
「へ？」
『だって、私がなるべくこの事件に関わらないように、何かの手助けになるようにって色々考えてくれてるんでしょ？』
僕はただ、何もできない自分が情けなくて。
少しでも彼女にとってツラいものを見ないようにしたかった。
でもそれはきっと、無力な自分への慰めだ
彼女が思っているほど純粋で綺麗な理由ではない
劣等感から生まれる、弱くて醜い利己的な感情
君とは、全然違う
『ねえ、シンデレラの靴って、ぴったりなのに何で脱げたのかな』
突拍子のないことを言い出すから、思わず顔を上げてしまった。
『王子様の気を引きたくてわざとやったんじゃないかって思うの。そう思わない？』
「そう、かもね」
今だ暗い僕の心を、時折見せる空虚で遠い、ガラス玉のような瞳で見つめる。
『幸せになりたくて、わずかな希望に賭けたんだよ、きっと』
彼女は何時も通りの悪戯っこのような笑みを浮かべ、ドアに手をかけた。
『イズクは強くて優しいヒーローになれるよ！
じゃあね！おやすみー！』
幼い頃と同じ言葉を僕に言い残して、慌ただしく自室へ帰っていった。
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akua(プロフ) - コメントありがとうございます。ラストまで読んでいただいて嬉しいです。きっと来世で彼女は普通の人として幸せになっているはずです。 (2019年4月29日 23時) (
レス) id: 9558b5da00 (このIDを非表示/違反報告)
のえたん(プロフ) - ラストの方、何度も読んでしまいました。彼女は来世で幸せになっていて欲しいです。 (2019年4月29日 20時) (レス) id: ee02f97984 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：akua | 作成日時：2018年4月23日 22時
