13こ ページ14
僕はその後、警察から軽く事情聴取を受けて、すぐに寮へと戻った。
しかし彼女はまだ帰ってきてない。
調査関係でおそらく帰れないだろうとのことだ。
そのため今僕は、彼女の買い物袋をぶら下げて何時もは通らない廊下を歩いている。
ようやく一番奥の、いわゆる角部屋に着くと『買い物したやつ部屋に置いておいて！』と渡されたキーホルダーの沢山ついた鍵を使って部屋のドアを開ける。
真っ暗な部屋の電気を着けて、言われた通りベッドの上に荷物を並べた。
それにしても相変わらずぬいぐるみの多い部屋だなぁ。
彼女はカピバラさんというキャラクターが好きで、昔から集めていたこともあり、部屋中至るところにグッズが置かれている。
食料を買い溜めしているという大きな冷蔵庫にも大切なプリント類の他に、明らかに飾りであろう大小様々なカピバラさんのマグネットが。
以前「集めすぎじゃない？」と聞いたところ『イズクのオールマイトグッズだって多すぎじゃん！』と言われてしまったため、それ以来何も言わないことにしていたのだが、更に増えたような気がする。
変わらない光景に懐かしさを覚えていたが、一つ以前とは違う点に気がついた。
机の上に飾られたスイートピーの花。
可愛らしいその花は部屋の雰囲気を明るくしていて良いのだけど、スイートピーは春に咲く花なので、少し違和感を感じた。
誰かに貰ったのかな。
その時、ふわりと風が頬を撫でる。
ふと視線を移せば、窓がほんの少しだけ空いていた。
不用心だなあ。
窓を閉めようと立ち上がると、机の上に置かれた本のページが捲れた。
一先ず窓に鍵を掛け、捲れたページをもとに戻そうと触れた瞬間、突然思い出せなかったあの日の彼女の歌声が鮮明に蘇った。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 3人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
akua(プロフ) - コメントありがとうございます。ラストまで読んでいただいて嬉しいです。きっと来世で彼女は普通の人として幸せになっているはずです。 (2019年4月29日 23時) (
レス) id: 9558b5da00 (このIDを非表示/違反報告)
のえたん(プロフ) - ラストの方、何度も読んでしまいました。彼女は来世で幸せになっていて欲しいです。 (2019年4月29日 20時) (レス) id: ee02f97984 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：akua | 作成日時：2018年4月23日 22時
