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「そんなもん惚れた女を助ける以外に理由があるか！！」
怒鳴られたことも、その理由にも、Aは思わず目を見開き思考が停止した。
言葉が出ないAに、今のうちにとゾムは屋敷の中に入り玄関で待っていたチーノたちと合流した。
チーノと一緒にいたAの母親が泣きそうになりながら我が娘を抱きしめ無事を喜ぶのを水を差せず、Aはただ困惑したように集まっている皆を見渡す。
使用人たちも一様に集まっており、誰もがAの無事を喜び涙している者もいた。
だが、Aはこの状況を喜べず一度目の前の母親を離しゾムに向き直る。
赤い瞳の中に、困惑と共に微かに見え隠れする苛立ちと怒気がゾムを捉え、ゾムも一歩も引かずに見つめ返した。
「…私は王宮に戻ります」
「させへんよ。お前はこのままW国に連れてく、グルッペンも許可しとるからな」
「っ…勝手なことばかりしないで！私がこのままいなくなればお母様も屋敷の皆も殺されてしまうの！そんなこと許せるわけないでしょう？！」
「だったらAが死んでええなんて、それこそ許せるわけないやろ。俺がお前を助ける理由はもう言ったはずや」
「それは…いえ、それとこれとは話が別です。軍人なら、一時の感情なんかで他国に口を出すべきではないことくらい分かるでしょう」
ゾムの気持ちを聞いた上で、否定はせずにあくまで個人的な感情を国の事情に持ち出すべきではないというAにゾムの瞳にもまた怒気が孕む。
それは自身の気持ちを国よりも軽いと軽んじられたことと、ゾムにとってAがいかに大きな存在であるかを否定されたが故の純粋な怒りだった。
「違うわけないやろ！俺がどんな気持ちが知らんくせに、知ろうともせんくせによう言えたな？！」
「ゾムさんだって私の気持ちを考えたことがあるっていうんですか？！大切な人を殺されるくらいなら、私が一人死ねばそれが助かるんです！大切な人を助けたいって思って何が悪いんですか？！」
「それを言うならお前だって俺にとって大事なんやってことほんまに分かっとるんか？！大層な理由も大儀もどうだってええねん！初めて心の底から惚れた女を死なせてたまるか！！」
「な…っ」
こんな人目の中で怒鳴りながら思いを告げられ、Aは恥ずかしがればいいのか怒ればいいのか分からなくなってしまいぐっと言葉を止めてしまった。
なんて答えればいいか分からずに、思わず頬に朱が差しそうになるのをどうにか抑えながらゾムを睨む。
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カラバコの中の子犬(プロフ) - 面白すぎて一気読みしました…！言葉の使い方や文章がとても品があり、文も読みやすくとても素晴らしい作品です…！！感動しました！！素敵な小説をありがとうございます！更新をお待ちしております！ (2020年12月30日 14時) (
レス) id: e1ec4a729c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：乃鴉 | 作成日時：2020年12月23日 19時
