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「言うたよな、A。大層な理由なんてないんや、ただお前を助けたい、救ってやりたい、それだけなんや！」
「ゾム、総統のお言葉の最中やぞ」
口を挟んだゾムを叱咤しながら、トントンはゾムの胸倉を軽く掴む。
ぐっと奥歯を噛みながら一瞬だけ沈黙したゾムだがそれでもすぐに言葉を続けた。
「絶対に助けたる、お前も、お前の大事なもんも！やから、俺を信じてや！！」
必死なその言葉に、Aはゾムを見つめたまま動けなくなってしまった。
現状、Aにこの状況を動かせるほどの力などない。
もしゾムを信じてAも家族も助けてもらうこととなれば、戦争は必然。
そのために国民を巻き込むことも、ましてや傷つけてしまうこともAは全く望んでいない。
さらに、もしこの戦争のせいでゾムや皆に何かあるようなことがあれば。
Aは誰かに助けを求めた自身を責め続け、きっと立ち直れなくなることを理性が訴えていた。
誰も傷つかないように、少しでも救われるように、誰にも頼らず、助けを求めなかったAにとって手を差し伸べるゾムの手を容易に掴むことができなかった。
だが、今ここで決断しなければ、助けられたかもしれない大切なものを失うことも分かっていた。
ふと、Aの脳裏にY国で助けられた時のことが過った。
Aを助けるためだけに他国まで駆け付けたゾムの腕の力強さを思い出し本能が理性を押しのけようとする。
今までもゾムはAを助けてくれたし、ずっと真剣に向き合ってくれていた。
ゾムを信じられないわけではない。
ただ、自分のせいでゾムが傷ついたり、失うようなことがことがあれば生きていけないと思ってしまうほど、Aの中のゾムの存在が大きいのだ。
思わず泣きそうな顔で弱弱しく首を横に振ってしまうAに、ゾムは奥歯を噛んで小さく切にAの名前を呼ぶ。
若草色の瞳も大きく揺れ、それでも必死な表情でAに訴えかけていた。
“「いつでも助けたるよ」”
以前ゾムがAにピアスを送った時の言葉。
ぎゅっと両手を握りしめてAは自分の心に問いかけた。
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カラバコの中の子犬(プロフ) - 面白すぎて一気読みしました…！言葉の使い方や文章がとても品があり、文も読みやすくとても素晴らしい作品です…！！感動しました！！素敵な小説をありがとうございます！更新をお待ちしております！ (2020年12月30日 14時) (
レス) id: e1ec4a729c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：乃鴉 | 作成日時：2020年12月23日 19時
