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「…でも、私は、お母様や皆を守りたくて、王族としての役目から逃げたくなくて」
「分かっているわ。あなたのその真っすぐな優しさがどれだけ私たちを救ってくれたか。でも、同じくらいどれだけ傷つけてしまっているかも。だからこそ屋敷の皆と決めたんです。Aを助けられる機会が巡ってきたなら、絶対に私たちはその希望を絶やさないようにしようと」
その言葉にAは目を見開いた。
さきほど自分の口から滑らせてしまった処刑のことを、母親はAがここに連れてこられる前から知っていて、そしてAを助けるためにW国に協力すると決めたのだと。
Aがここからいなくなったことが知れれば、王宮はこの屋敷に押し寄せるだろう。
そしてAという防波堤を失ったこの屋敷の者がどういった扱いを受けるかなど想像に難くはない。
Aは顔を歪めて小さく首を横に振る。
「私が逃げれば処刑されると、陛下が言ったんです。私がここに残れば皆を助けられるの」
「そうね、そうかもしれない。でもね、だからと言って娘の死を願う母親なんて、いないのよ」
Aが母親や屋敷の使用人たちを想うように、ここにAの死を望む者はいない。
「あなたが生きてさえいてくれたら、それでいいの。あなたは私たちの誇りです。だからこそ、こんなところで途絶えさせるわけにはいかない。生きてさえくれたなら、あなたはきっともっといろんな人を救えるはずだから」
「お母様、私は…」
「これはここにいる皆の総意であり、あなたに最後の使命を言い渡します。生きて、どうか幸せになって」
頬を包む母親の手の上に自身の手を乗せ、視線で否を訴えるAに微笑みを見せてから母親はゾムに声をかけた。
「どうかこの子をお願いします」
「…分かっとる。チーノ、あと頼んだで」
「荷が重いけど頑張ります。はよショッピくん送ってくださいよ」
「今日の夜には着くはずやから」
「ならええです」
チーノと頷き合うとゾムはまたも手早くAを抱えて屋敷を後にしようとする。
気付いたAが咄嗟に母親に手を伸ばすも、その手を受け取る者は居らず二人はX国を脱出した。
屋敷に連れていかれる時は暴れていたAもW国に向かう道中はずっと無表情に顔を俯けていた。
W国に着き、誰にも遭遇せずに総統執務室に連れられたAはグルッペンの前に降ろされ俯けていた顔を上げる。
濁りの混じった赤い瞳にグルッペンは微かに眉を動かしたが何も言わずにAの言葉を待った。
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カラバコの中の子犬(プロフ) - 面白すぎて一気読みしました…！言葉の使い方や文章がとても品があり、文も読みやすくとても素晴らしい作品です…！！感動しました！！素敵な小説をありがとうございます！更新をお待ちしております！ (2020年12月30日 14時) (
レス) id: e1ec4a729c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：乃鴉 | 作成日時：2020年12月23日 19時
