【wrwrd】強さを教えて【zm】 (ページ35)

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現在に戻り、ゾムがエーミールの書庫を勝手に開けると紅茶片手に机に本を積み立てて手元の本を読んでいるようだった。
黙って一人用の椅子を片手に対面に座るように移動すれば顔を上げたエーミールが微かに驚いた様子で、だけど嬉しそうに目を細めて読んでいた本を閉じ机に置いて立ち上がった。

「今紅茶を淹れますね」

ゾムの返事も待たずに奥に消えたエーミールが数分後に戻れば、その手にはもう一人分のカップセットとクッキーも用意されていた。

「ちょうどよかったです。これオスマンさんにおすそ分けをいただきまして」

「へぇ、じゃあ貰うわ」

「はい、どうぞ」

遠慮なく紅茶とクッキーを口に運ぶゾムをにこにこと嬉しそうに眺めるエーミールはいつものことなので、おいしいクッキーを食べて気が済んだゾムはどう話を切り出すべきか少し悩み、だけどすぐに言葉を飾ることを止めた。

「前のAの話」

「はい？ああ、A様のことですか」

「エーミールの言う通りやった」

短い言葉の中でゾムの言いたいことを汲み取ろうとゾムを観察したエーミールは問いかけた。

「ゾムさんは、今でもA様のことが嫌いですか？」

その問いにゾムは断言した。

「嫌いやないで」

控えめに、それでもはっきりとした答えにエーミールは安堵する。

「最近のゾムさんを見れば分かりますけど、それでも安心しました。でもあそこまで嫌っていたのに、何かあったんですか？」

「なんや、向き合えって言うたんはエミさんやろ」

「そうですけど、ゾムさん素直やないから」

遠慮なく言い切られて黙ったゾムの据わった視線がエーミールを突く。
その視線から逃げるように再度何かあったのか問えばゾムは大仰にため息をつきながらもまたクッキーに手を伸ばしぽつりぽつりと零していった。