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ゾムたちの歓談にとうとう耐え切れなくなったのか、Aは逸らしていた顔をバッとゾムの方に向けて異論を唱えた。
「確かにあの時は助けていただきましたが言いたい放題が過ぎませんか？！」
「事実やん。普通王族の人間は輩追い払ったり木登りして猫助けたりせぇへんやろ」
「見解の相違です。私は私の思う通りに行動しているだけです」
「それはええけど、この国でそういうことはせんといてや。なんかあったら俺が助けたるし守ったるから、自分で何でも解決しようとすんな」
「…気を遣っていただけるのはありがたいですが、自分の問題くらい自分で片をつけられます」
「Aの場合は自分の問題やないのに首を突っ込んどるから言われとんのやで？自覚せぇや？」
「だって、見て見ぬ振りはできません」
「やからそういう時は俺を呼べって言うとるんや」
「ゾムさんがいなかったらどうするんですか」
ゾムとAの平行線を辿る話の中で、Aは拗ねたように目を細めてゾムを見ればまるで子供に言うことを聞かせる保護者のように小さくため息をついたゾムはポケットから何かを取り出すとそれをAに押し付けた。
手を離すゾムの手からそれが転がり落ちないように慌てて受け取れば、Aは自分の手の中を覗き込んで微かに目を見開いた。
「これは…」
「お守り。持っといてや」
Aが手の中のそれを持ち直せば、小さな雫型の深い赤色をした対のイヤリングがAの手の中でキラリと煌めいた。
慌ててゾムにそれを返そうとしても、ゾムは頑なに受け取ろうとしない。
「このようなもの、いただけません！」
「別に俺が買ったものやないからいらんこと気にすんな。どっかで誰かから貰ってんけど質に入れるのをすっかり忘れとっただけやから」
「誰かからのもらい物なら尚更受け取れません！」
「こんなん俺の趣味やないし、この国の幹部は色々もの貰うことが多いから誰からのなんて一々気にしてられんわ」
薄情とも取れるゾムの言い分にAが感情的に言い返そうとした瞬間。
Aの手の中からイヤリングを奪い取ると最低限の動作と接触でいつの間にかAの両耳には件のイヤリングが付けられていた。
あまりの早業にAも、ショッピもチーノも驚愕から何も言えずにいると、ただゾムだけがイヤリングをつけるAを至近距離で見つめて、満足そうに小さく頷いた。
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作者名：乃鴉 | 作成日時：2020年6月24日 19時
