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どう言葉を返すべきか悩んでいるうちに、Aが先制をとってゾムに微笑んだ。
「他の皆様からも、ゾム様のことは聞いております。自分の感情に素直が故に色々とあるけど、それでもとても優しく仲間思いの方だと」
「…何を聞いとんねん」
「ふふ、それとお食事をとても美味しそうに食べるとも聞いております」
「美味い飯は幸せになれるからな」
「そうですね、それは私も同じように思います」
どうやら自分の仲間たちに、初日のフォローをさせてしまったのだと気づいて、しかもAからそれを聞かされて照れ隠しに深くフードを被ればAはなお楽しそうに笑った。
それと同時に、目の前でくすくすと上品に笑むAに最近気になったことをつい指摘する。
「それ、取ってや」
「それ、とは」
「名前の様ってやつ。他の奴らも何人か取ってるやろ?俺も同じように呼んでほしいねん」
「えっと…ゾムさん?」
「おん。あと、街にいる時は敬語外してもええんやない?別に王族として来とるわけちゃうやろ」
「それは…」
「少なくとも、前に話してくれた話し方の方がAらしいと思うで」
確かに王族としてお淑やかなAも彼女の一面ではあるのだろう。
それでもゾムは、自分と面と向かって王族としての責務を説いたあの時のAの方が彼女の本質により合っているように思えたのだ。
ゾムの提案に少し思案するように視線を彷徨わせたAは、結局首を横に振った。
「…申し訳ありません。その、基地内で同じように話してしまうかもしれないので…」
「別にええやん。他の奴だって気にせんと思うで。なんならコネシマやシャオロンとかは逆に喜びそうやし」
「ですが、私は隣国の使いとしてここにいるので」
「友好のため、やろ?ならもっと仲良くなってもええと思わん?」
「その言い分は少し狡いです…」
「物は言いようやで。必要な時だけ敬語になればええねん。少なくとも俺はあの時のAとの方が仲良くなれると思っとる」
未だ視線を彷徨わせるAは恐る恐るゾムの若草色の瞳を捉え不安げに深紅の揺らした。
先日啖呵を切ったときとは別人のように迷子の子のように自分を伺うAに、ゾムはAの手を引いて歩幅を合わせるようにゆっくりと歩きだした。
「今すぐが無理なら街にいるときだけでもええよ。ただ、皆もうAのことは受け入れとるってことだけ覚えといてや」
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作者名:乃鴉 | 作成日時:2020年6月24日 19時