決別 ページ3
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前々から思ってた、Aが俺好みの服を着ると、背徳感がすごかった。背は低いし身体はばかみたいに細いしで、顔も小学生だし。見ちゃいけないもの見てる気がして、そういうのはたまにでいいから、って、お願いしたこともあった。ならもっと太るって聞いてくれなかったけど。
俺が禁煙を始めたら、Aまで、煙草をやめた。元々かっこつけるためにやってたの、って、多分、俺のために自分を厭わなかった。志麻君といれるなら不幸でも絶望でもなんでもいいよって、誕生日にくれた手紙に書かれてて、読んだときはよくわからんけど泣けた。
健気だったんだと、思う。初めての情事でも、後から知ったことだったけど、彼女はどうやら初めてだったらしく。言ってくれればもっと優しくしたのにって言ったら、志麻君が満足できないでしょって、明け方のベッドの中で笑い飛ばしてたっけ。
そんなだったから、いつかAに捨てられるんだろうなって、思ってた。弱ってるとこも、涙すらも見せたことないくらい完璧なAに、いつか飽きられるんだろうなって。俺は、こんなだったから。Aの前じゃいくらでも本当の自分を晒せたのに、彼女はむしろ、俺に気を遣ってるんじゃないかと、何度も思い悩んだ。そうだよ、俺はAの溜め息すら聞いたこと、ねぇよ。
「うわ、冷蔵庫の中なんもない。これじゃ朝ご飯作れないし、買い物行こうかな」
「......行かんくっていいよ」
え？と素頓狂な声が聞こえて、あぁ、やっぱり大好きだなんて思いながら、その気持ちさえも殺して、言った。
「別れよか、もう」
「......なに、言ってるの、急に」
「急やない、ずっと思ってた。」
「やだ、つまんない嘘言わないでよ、ねぇ、このままだよね、私達」
嘘って言ってよ、なんて、俺に背を向けて、冷蔵庫のドアを閉めた。その背が小さく震えていて、初めて俺の前で泣いてくれたのが、嬉しかったんだよ。
自分の中だけで結論を出して、俺は、彼女と離れることを選んだ。
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作者名：志賀つくだに | 作成日時：2019年3月8日 18時
