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カランカラン…

聞き慣れた喫茶店のベルの音と共にお店を出た。
歩き始めてから、向かい側の道路を見たのは、本当になんとなく。

それはあまりに不意だった。




…いた!

やっと会えた。
思わず叫んでしまいそうになって慌てて言葉を飲み込んだ。

無意識のうちに、私は道路を横切って彼の近くまで走っていた。



『…亮』



控えめに飛び出した言葉には、緊張と恐れが混じっていて自信がなかった。
そんな私の声に、彼は気付いてこっちを見た。

二人の目が合う。



「……」



先生?


亮の発した小さな声はちゃんと耳に届いた。
立ち止まった彼は驚いたように私を見て、でもすぐに目を逸らした。

たったそれだけのことが悲しくて。



『ずっと、ずっと探してた』


「…え?」



一言話す度に心臓が早鐘を打つ。
何を言おう、と考える暇もなく、勝手に口が動いていた。



『あの時亮に言われて、確かに私、乗り越えた気になってただけだって気づいたの』



亮は私の目をじっと見つめて、軽く息を吸い込んだ。



「…ごめん。俺先生に酷いこと言ったよね。ずっと後悔してた」


どうして、謝るんだろう。


『謝って欲しいわけじゃないよ。私は、』



あの言葉に、助けられた。


目を見開いた彼は、そのまま何も言わずにいた。
その姿を見て、何故か笑ってしまう。

二人の間を風が吹き抜けた。



『好きだって言ったでしょ、私に』


「…忘れてて欲しかった、それ」


『なんで?』


「恥ずかしいから」



あの時も伝えるつもりじゃなかった、と彼は耳を赤くして言う。



「俺、ずっと先生が好きだった。初めて見た時から」



.



『好きだよ、私も』



先生の口からそんな言葉が飛び出した。

数秒の沈黙。
さっきまで心臓がバクバクだったはずの俺の思考は完全に停止してしまったようで、すぐに反応することが出来なかった。

…え?



「い、いま、何て言った?」


『好きって言った』


「誰が?誰のことを?」


『私が、亮のことを』



わざとらしくゆっくりと言われる。

…好き?先生が俺を?

はっきりとそう言った彼女の耳は赤くなっていた。


「まじで?」


『うん』


「…めっちゃ嬉しい」


あはは、と彼女は笑う。

自然と涙が流れるのが分かった。
あの時ぶりに泣いた。

きっと、今の俺の顔はめちゃくちゃだ。



「俺と、付き合ってくれませんか?A先生」


『…はい、』



何故か先生も泣いていた。
ぼやけた視界の中で、二人で笑い合う。

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那奈(プロフ) - 続きがめっちゃ気になる!!大変だと思いますが更新頑張ってください!! (2020年4月16日 15時) (レス) id: 4a3fdbf345 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名: | 作成日時:2020年4月7日 18時

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