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やっと仕事が終わった。
疲れきった体を動かして何とか帰宅する。
…あれ。
ポストにハガキが入っている事に気が付いて取り出す。
リビングに入って椅子に腰かけた。
何だろ、と思いながらハガキの裏を見る。
『同窓会…先生も来てください?』
何年か前に私が担任した学年の同窓会。
それにどうやら招待されたらしい。
久しぶりだな…誰がいたんだっけ。
立ち上がって本棚の前に向かう。
たくさんある本の背表紙を確認すると、卒業アルバムは本棚の一番端にあった。
取り出して一枚ずつページを捲っていく。
生徒の個人写真や部活の様子を見ると、あの頃の感情が舞い戻ってくるような感覚がする。
個人写真の所で、目が留まった生徒が何人もいた。
顧問をしていたバスケ部の部員や、個人的に仲が良かった、環奈ちゃんと呼んでいた女の子。
私が担任していたクラスの生徒達も懐かしかったし、全員覚えていたことに自分でも驚いた。
同窓会…行こうかな。
皆と会えるのが、純粋に楽しみになっていた。
.
同窓会の当日、会場に着いたら幹事の子に手招きされて、サプライズするから待ってて、と言われた。
「今日は先生もお呼びしてまーす!」
しばらく廊下で待機していると、ドアの向こう側からそんな声が聞こえる。
え、嘘。
そんな期待されて大丈夫?
急に来る緊張を隠して、ドアを開いた。
「「立花先生ー!!」」
『久しぶり!』
覚えられていた事が嬉しくて、笑顔でそう言った。
学年全員でかなりの人数がいるけど、ほとんど見たことのある顔ぶれで懐かしい。
「先生!こっち来てー!」
『…うわ、みんな大人になったねー』
クラス別で座っているのか、呼ばれた所に行けば私が担任した生徒達がいた。
見覚えのある顔なのに、全員どこかしっかりした雰囲気がある。
まさか一緒にお酒を飲む日が来るとは。
もう未成年ではないのに、私の中でこの子達はまだ高校生だったから違和感がすごい。
修学旅行や文化祭など、色々語り合っているうちに元生徒達はお酒が回ってきて、長話にこっちも相槌が適当になっていた。
『もう、飲み慣れてないから…』
眠たーい、とか言いながら机に突っ伏する人数が増えてきた。
まるで授業終わりのあの頃みたいで笑みが溢れる。
違うのは酒臭いところだけだけど。
「A先生、やっと酔っ払いから解放された」
聞き覚えのある声がする。
誰か思い出して振り返れば、随分美形な三人が笑っていた。
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那奈(プロフ) - 続きがめっちゃ気になる!!大変だと思いますが更新頑張ってください!! (2020年4月16日 15時) (レス) id: 4a3fdbf345 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:麦 | 作成日時:2020年4月7日 18時