子供のまま、痛いまま【吉沢亮】 (ページ8)

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「別れよう」

…え？

『な、んで』

「…もう嫌いなんだよ」

知らなかった。
彼の気持ちの変化に、気付いてなかった。
馬鹿だ、私。

じゃあ、私は無理に付き合わせてたんだ。
買い物も、勉強も、デートも、全部全部、無理矢理に。

『…ごめんね』

涙を堪えようとするけど止まらなくて、立ち去ろうとしても足が動かなくて。
必死に絞り出したのは、その一言だった。

「そんなの、いいから」

冷たい彼の声が聞こえた。
指先が震えて、感覚がなくなる。

『本当に……大好、きだった』

普段はなかなか言えなかった言葉。
上手く声を出せなくて所々詰まりながら、でも必死で伝える。

それでも、倫也は何も言わない。

彼の顔を見るのが怖くて、ずっと自分の足元を見ていた。
止まることを知らずに溢れ出した涙が、ぽたぽたと地面に落ちて色を変える。
ただ呆然と立ち尽くしていたら、痺れを切らした彼が叫んだ。

「さっさとどっか行けよ！！」

ビクリと肩が震える。
彼が声を荒げる事なんて初めてで、怖くて、寂しくて。

固まってしまった足は使い物にならない。
でも走って、走って、逃げ出した。

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目を開けば、見慣れた天井で安心する。
少し違和感を感じて目元を触ってみると、涙で濡れていた。

『…変な夢見ちゃったな』

最近その夢を見ていなかったから、もう忘れられたのかと思っていた。

…仕事をしよう。そして忘れよう。

あの人の事は、きっと時間が洗い流してくれる。

そう自分に呟いて、学校の支度をし始めた。