子供のまま、痛いまま【吉沢亮】 (ページ7)

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「僕と、付き合って下さい…！」

『っ…はい』

あれは、何年前だろうか。
ある秋の日に、校舎の裏で、彼…中村倫也にそう告白された時は、嬉しくて涙が溢れ出した。
長かった両想いが、ようやく実を結んだ瞬間だった。

いつものようにはにかむ彼の耳は、見たことが無いくらい真っ赤で。
ぼやけた視界でそれをからかったのを覚えている。

.

冬の冷たい風が頬に突き刺さる。
確か、真っ白な雪が降っていた日。

「ねぇ、A」

『ん？』

「今日、何の日か分かる？」

『えー、何だろ。分かんない』

「……」

想像以上の反応だった。
声も出ない彼を見て、笑いながら鞄を開ける。

『倫也、』

「…なに？」

『今日はバレンタイン、でしょ？』

「え！？」

『はい、どうぞ』

ありがとう、でも知ってたんだね、と微妙な表情をする彼。

ただで渡すなんて面白くないし、どんな反応をするのか気になったからね。
そう言おうと思ったら、

「どうせ、普通に渡すと面白くないし、とか、びっくりするところ見てやろう、とか思ってたんでしょ」

『…違うけど？』

「ほら、図星」

でも、ありがとう。と言って笑う彼は、私よりも一枚上手だと痛感した。

.

少しずつ春の匂いがしてきた、卒業式の日。

式は無事に終わった。

先生が泣いていて、クラスの皆と笑い合う。
友達と話していると、倫也に声をかけられた。

「A、ちょっといい？」

『うん、どうしたの？』

聞いても答えてもらえなくて、こっち、と連れてこられたのは、あの校舎裏。

何かがおかしいと思った。
倫也の纏っている雰囲気が、いつもとは少し違う。

『倫也…？何かあった？』

「A」

普段より低い声で名前を呼ばれて、緊張する。
思わず背筋が伸びた。

強い風が吹く。
彼の伸びた前髪が退けられ、顔が露になった。