子供のまま、痛いまま【吉沢亮】 (ページ6)

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「心配しないで下さいね。俺、誰にも言いませんよ」

『…よりによって吉沢くんに見られたのは運が悪かったね』

「お、俺の性格分かってきましたね」

思わず深いため息を吐く。
この数分だけで、彼の性格の悪さは分かり始めていた。

『その綺麗な顔には合ってない性格ね』

「その通りです」

ニヤリと笑ってそう言う吉沢くんも、私の第一印象とは全く違った。

…もう無理だ、話していられない。
手当ても終わっているから、半ば強引に追い出す。

『ほら、部活行って！』

「はーい」

失礼しましたー、と言いながらドアが閉められる。
静かになった保健室で、ふみが何かを呟いた。

『え？』

「いや、何でもないよ」

ふみは何か考えているようで少し引っ掛かったが、今はそれよりも、吉沢亮という存在に悩まされている。
これからが思いやられる…どうしようか。

窓の外は、もう薄暗くなっていた。

『じゃあ、ふみ。私もそろそろ行くね』

「うん、ばいばーい」

『ばいばい』

.

家に帰って、ベッドに倒れこむ。

『つっかれた…』

下手するとこのまま眠ってしまいそうで、重い体を動かしてお風呂場へ向かった。

.

スキンケアまで全て終えてベッドに入り、目を閉じる。

…先生になって生徒の皆を見ていると、昔の自分を思い出す。
懐かしいような、温かいような、そんな感覚に囚われる。

ふみとの楽しかった思い出、必死に勉強した事、放課後もずっと練習していた部活の記憶…
もう一生ないであろう、毎日が濃かったあの年。

そこまで頭を働かせてから、一旦思考を止めた。
詰まった息を吐いて布団を被り直すと、すぐに眠気が襲ってくる。

段々薄れていく意識の中、私は何故か、あの人を思い出していた。