子供のまま、痛いまま【吉沢亮】 (ページ50)

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土曜日になって、前と同じ居酒屋で同じお酒を飲む。
今日は奥にある個室に座っている。

三人で飲み始めて気付いたらけれど、裕貴もふみもあまりお酒に口をつけていない。
…どうしたんだろ？

「今日はさ、A」

『うん？』

「倫也のこと、話したくて」

何だか固い表情で言う二人。

…やっぱり遠慮してたんだな。
でも、実はもう大丈夫なんだよ。

安心させようと笑顔を浮かべた。

『うん…最近私、倫也のこと思い出しても平気になってたんだよ』

「え？」

『二人とも、ごめんね。心配かけて。でももう大丈夫だよ。今なら思い出しても全然辛くなくて、いい思い出だって笑えるの』

「……」

二人とも黙って私を見つめた。

そんなに信じられないのかな？
なんだかその様子は面白かった。

『本当は、大人になってから四人で話したかった。高校の時のこと、お酒飲みながら沢山笑って話したかった』

「…A、」

『今倫也ってどこ住んでるのかな。早く会いたいなー』

私のテンションと反比例して二人は黙りこくっている。
隣にいるふみは俯いて、下唇を強く噛んでいた。

『…どうしたの？』

あいつは…倫也はもういない

…亡くなったの。五年前、病気で

現実味のないモノクロの言葉。

時が止まったかと、思った。