子供のまま、痛いまま【吉沢亮】 (ページ46)

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あれから数日後、休日の夜。
居酒屋のカウンター席に彼と並んで座る。

「ほんと久しぶりだね」

『ね。裕貴、あんまり変わってないよ』

「そう？」

そう言って彼、山田裕貴は楽しそうに笑った。

彼は高校時代の友人で、ふみや倫也とも仲が良かった。
高校を卒業してからはほとんど連絡を取っていなくて、顔を会わせるのだってそれ以来だ。

『仕事、今何してるの？』

「普通にサラリーマン。Aは？」

『高校教師』

「すげぇ…あの頃から頭良かったもんな。ってか夢って言ってなかったっけ？」

『うん。それにふみも同じ学校だよ。保健室の先生』

「二人して夢叶えたんだ！うわぁ、ふみにも会いてぇな」

『よし、誘うか！』

「今！？」

急いでふみに連絡すれば一瞬で行くって返事が返ってきた。
さすがだな、と思いながらトーク画面を裕貴に見せる。

「…相変わらず行動力の鬼だわ」

『ふふ、何それ』

目の前に運ばれてきた生ビールを煽る。
心なしか、いつもより美味しい気がした。

ぱっと横を見ると彼はビールをゴクゴクと飲んでいて、あっという間にジョッキが空になっていた。

『お酒強いの？』

「いや、そんなに。でもなんか今日は飲んじゃう日だな」

『…懐かしいからかな』

それからは昔の思い出話をたくさんした。
まるで高校のときに戻ったみたいに賑やかで楽しい。
途中でふみも来て、また会話に花を咲かせた。

.

「じゃあな、二人とも」

「うん、じゃあね」

『ばいばい』

裕貴と連絡先を交換してその日は終わった。
お店の前で解散して、三人とも別々の道で家に帰っていく。
一人で歩く夜道がどこか寂しい。
さっきまでの騒がしさは耳の奥に残っていた。

少なくはない量を飲んだのに私は全く酔わなかった。

夜が、更けていく。