子供のまま、痛いまま【吉沢亮】 (ページ34)

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「あ、A先生！」

『しーーっ！』

集合場所は学校近くのコンビニの前。

…離れているとはいっても、ここでバレたら何を言われるか分からない。
しかも今はまだ部活の時間帯。

そんな恐怖感を胸に、名指しで呼ぶ環奈ちゃんをうるさい、と咎めつつ。

彼女の目の前に、コンビニの袋を突き出した。

『ハッピーバレンタイン？』

「これ絶対今買ったやつでしょ。…あ、ダースだ！」

『それで満足？満足だよね、はいお帰り下さい』

「やだー、もうちょっと一緒にいようよ」

あれ、付き合いたてのカップル？

そう勘違いするほどの破壊力を持った上目遣いに、私は渋々頷いた。

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『環奈ちゃんはさ、』

「ん？」

近くの公園で、ブランコに座りながらダースを食べる彼女に話しかける。

…美少女凄いな、こんなボロボロの公園もキラキラして見える。

なんて、下らないことを思いながら。

『何でそんなにチョコ欲しかったの？』

「んー、…先生と友チョコって、良くない？」

『……』

「なんかワクワクするよね、漫画の中みたい」

…めっちゃ不純な動機ー！！

なんだそれ、なんだこの子。
でも、そんなに驚いていない自分。
心のどこかで、環奈ちゃんがこういう考えの子だと分かっていたの…かもしれない。

「あ、じゃあそろそろ帰るね」

『そうなの？気を付けてね』

「部活やってきました、位の時間に帰るのがベストだからね」

ああ、こういう子だ。

逆に笑えてきて、笑いを噛み殺しながら手を振った。

『……あ！』

職員室に明日返す予定のプリント類を丸々置いてきた事を思い出した。

うわー、まだ採点終わってないんだよなぁ……。

冷たい風に体が震えてマフラーを鼻まで持ち上げ、学校への道を急いだ。