子供のまま、痛いまま【吉沢亮】 (ページ27)

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まだ太陽は強く照りつけていて、雲の隙間から見える青空は透き通るよう。
もう９月なのに、真夏のような暑さ。

そんな日に、体育大会は開催された。

「がんばれーーー！！」

応援席から響く大声に混じって私も同じように叫んだ。
目の前を走者が走り抜けた瞬間、その切った風が勢いよく吹く。

休憩しようと人の少ない所まで下がって木陰に入り、周りを見てみる。
グラウンドが生徒のエネルギーに満ち溢れていて、いつもと同じ場所だと思えないほど輝いて見える。
必死な顔をして走っている子も、汗だくになりながら応援する子も、凄く楽しそうだった。

「A先生～」

目の端でポニーテールが揺れた。
そこから女の子の声が聞こえ、肩を叩かれる。

『あれ、環奈ちゃん』

「先生、今日も可愛いね！」

『何、そのチャラ男みたいなセリフ…』

笑顔が眩しいこの子も私の教え子で、つい最近仲良くなった。
ずっと教室の端で本を読んでいるような大人しい印象だけど、話してみると結構面白いし、しかも…

すっっごい可愛い。

絶対環奈ちゃんのことが密かに好きな男子いる。

『…もー、環奈ちゃん可愛い！』

「わ、急に何！？」

その華奢な体に抱きついても、引き剥がそうとしないでそのままにしてくれる。
それに、石鹸みたいな良い匂いする。

あれ、私変態かな？

『環奈ちゃん、走り終わったの？』

「うん。ちょっと前に」

『えー、見逃した……』

「見なくていいよ」

『冷たいなー。思春期かよ』

「そうだよ」

.

気付けば体育大会ももう後半で、この競技が終わったら後はリレーだけ。
これまでずっと仕事があって、競技をちゃんと見ないうちに終わってしまいそうになっていた。

あ、そうだ。
吉沢くんの走りを見届けないと。

選手が入場して異常に人が増えた応援席へと向かう。
人の波を掻き分けて、何とかグラウンドが見える所までたどり着いた。

集団の中から目を凝らして吉沢くんを探す。
やっと見つけた彼は、スタートラインに立って鉢巻きをぎゅっと結んでいた。