子供のまま、痛いまま【吉沢亮】 (ページ23)

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夢を見ていた。

誰かが私の腕を引いて走る。

顔には影が落ちていて良く見えなかったけれど、口元には柔らかな笑みが浮かんでいた。

…綺麗に笑う人だな。

ただ、ぼんやりとそう思う。

握られたその手は、

力強くて、温かかった。

.

「A」

『ん……ふみ？』

目を開けると心配そうな表情のふみがいた。

え？何で？

焦って記憶を探る。

体調が悪くて、吉沢くんに声をかけられて…そこからは？

『まさか、倒れた！？』

少し掠れた声で叫びながらがばっと起き上がると、ふみが呆れた様子でこっちを見る。

「A、働きすぎ。最近寝てなかったんでしょ？」

『まぁ…そうだねぇ』

「そうだねぇ、じゃないよ。出来ない分の仕事はしない、頼まれても断る！」

『…はい』

返事をすればふみは安心したように笑う。
心配かけちゃったな、と申し訳ない気持ちでいっぱいになった。

「あ、そうだ」

『ん？』

「吉沢くんが保健室まで運んでくれたんだよ。ちゃんとお礼言っておきなよ」

『嘘！？』

吉沢くんに運ばせてしまった？
絶対重かったじゃん…
それに、殺される。明日までに吉沢ファンに殺される……！

「緊急事態だったからね。しょうがない」

『え、口に出てた？』

「出てた」

そう言って笑われる。

…え？しょうがないって、殺されてもってこと？

終わりの見えない思考回路に入ってしまった気がする。
面倒くさくなって考えるのは放棄した。

「大事をとって、明日は休みなよ」

『いや、ダメだよ。来るよ』

「それがダメなの！明日は家でゆっくりして」

『…分かった』

Aの分の仕事は私が何とかしておくから。そう言って、ふみは優しく笑う。

すると、ドアがノックされた。

「はーい」

「失礼しまーす」

『…吉沢くん』

入ってきた彼は、私の姿を見るなり駆け寄ってきた。

「A先生、大丈夫ですか？」

『うん。運んでくれたんだよね、ありがとう』

「いや、先生が無事で良かったです」

微笑みかけると、私のとは格が違う微笑みを向けられる。
それに加えてとんでもないイケメン発言に感心した。
ふみも同じことを思ったらしく、顎に手を当てて呟く。

「イケメンかよ」

「そうでーす」

『今ので台無し』