子供のまま、痛いまま【吉沢亮】 (ページ22)

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「先生！」

しっかりノックもせずにドアを開ける。
パソコンに向き合っていた二階堂先生が振り向いた。

「そんな急いで……A！？」

先生は勢い良く立ち上がり、仕切りのカーテンを開けてベッドを指差した。

「ちょっ、取り敢えずこっち！」

言われた通りにベッドへ寝かせると、二階堂先生が俺をベッドから追いやる。
ちょっと待っててね、と言うとカーテンを閉めた。

急に静かになって、そっと息を吐き俯く。
近くにある椅子に座り、A先生は大丈夫かと、ただそれだけを考えていた。

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暫くして、カーテンが開いた。
見上げれば二階堂先生が優しく微笑んだ。

「最近寝不足だったみたい。それで倒れたんだと思う」

病気でもなんでもないから、心配しなくて大丈夫。と聞いて、いつの間にか強張らせていた全身の力が抜けた気がした。

「よかった……」

「ふふ、運んでくれてありがとね。吉沢くん」

「いやいや、俺は何も」

すると、二階堂先生が時計を見上げた。

「吉沢くん、もう掃除始まってるんじゃない？」

「あっ！」

くっそ、忘れてた…

すいません、行きますね！と言いながら保健室を出た。

走って教室まで戻り、掃除中で騒がしいクラスメートに紛れて箒を取り、隆の所へ歩く。

「お、亮」

「ごめん、遅れた」

「全然」

話していると、そういえば、と、隆がニヤニヤ笑う。

「え、何」

「亮さー、先生をお姫様抱っこしたんだって？」

「はっ！？」

大声を出してしまい、慌てて口を押さえた。
何故か二人とも小声になりながら話す。

「なんで知ってんの」

「噂になってるよ。女の子達が騒いでた」

「この短時間で？」

「そう。亮の影響力凄いからねぇ～」

「それは知ってるけど…怖っ」

そう言えば、相変わらずだなと笑われる。

「先生が倒れたから、保健室まで運ぼうとしただけ」

「倒れたの！？」

今度は隆が口を覆う番だった。
少し周りを見渡してから、再び声を潜める。

「先生、大丈夫だった？」

「うん。寝不足だったみたい」

「そっか…最近忙しそうだったもんな」

隆は視野が広く、すぐいろんな事に気付く。
先生の事も勘づいていたらしい。

俺も知ってた、なんて、変な対抗心を燃やす自分が情けない。

机が運ばれたタイミングで、黙って教室の床を掃き続けた。