子供のまま、痛いまま【吉沢亮】 (ページ21)

今日:32 hit、昨日:9 hit、合計:96,662 hit

20 ページ21

吉沢side

「先生……A先生！！」

どうしよう、どうすればいい？

目の前には青白い顔をしたA先生。
何度声をかけても、体を揺さぶっても反応がない。

なんとか倒れる前に支えられたから良かったけど、階段で意識が無くなるとか危なすぎ…

どうしようもない緊張からか、恐怖からか、大量に冷や汗をかいている。
冷静さは掻き消え、回らない頭を必死で動かした。

…保健室まで運ぼう。
二階堂先生のところまで行けば、きっと大丈夫だろう。

やっと思いついて、A先生の背中と膝の裏に手を回す。

「失礼しまーす…」

誰にともなくそう呟き、先生の体を持ち上げた。

…なにこれ、ちゃんと食べてるの？

少し小柄なA先生は余りに軽くて、どこかに飛んでいってしまいそうな程だった。

しっかり抱えなおして早足で階段を駆け降りる。
早く、早く行かないと。

時々すれ違う女子達が、俺の姿を見るなり悲鳴をあげた。

うるせぇ…見て分かんないの、倒れてる人いるんだよ？

キャーキャー騒ぐのが迷惑で、思わず睨みつけそうだった。

風に揺れる髪の毛と、青白い顔を見て心配になる。

まさかこんな形で先生に触れることになるとは思っていなかった。
時々鼻を掠める柔軟剤の匂いが余計に落ち着きを無くしていく。

他の奴じゃなくて良かった…と、こんな状況でも思う自分がいる。

最低か、俺。

腕の中の温もりを感じて、そんなことを考えている自分が嫌になった。