子供のまま、痛いまま【吉沢亮】 (ページ19)

今日:8 hit、昨日:9 hit、合計:96,638 hit

18 ページ19

七月も後半。
梅雨は明け、じわじわと気温が上がった。
煩くなってきた蝉の声が体感温度を倍にする。

最近は仕事に慣れてきたため、他の仕事を任されることも多い。
その分しなければいけない事が一気に増えて、目が回るほど忙しかった。

気付けばここ一ヶ月はよく眠れていない。
メイクを落としたときに見えるクマが、自分が疲弊していることを表していた。

でも、あと少しで夏休み。

何度もそう自分に言い聞かせて、なんとか気持ちを奮い立たせる。
そんな生活が続いていた。

.

鳴り響く目覚まし時計を止める。
怠い身体を引き摺って、洗面所まで歩いた。

鏡で顔を見ると、相変わらず病人のような酷い顔。
もう見慣れてしまったので、驚くことも無く顔を洗った。

朝ごはんを食べて、メイクをしようと道具を持ってくる。

さっきより顔色はましだけど…

やっぱりダメか、と思って、コンシーラーでクマを消した。
青白い顔を隠すように、チークを広めに塗る。

完成した自分の顔は健康的で、化粧凄いな、と思った。

顔と首の色の差を誤魔化すように、伸びてきた髪の毛は下ろして、毛先を内に巻く。
暑いから纏めよう、なんて考えられなかった。

.

それからはもう、地獄だった。

涼しい家から一歩出ると、太陽が容赦なく照りつける。
下ろしてしまった髪の毛は熱を持って、蝉は煩いし、体感温度は40度を越えていた。

やっと駅に着けば通勤ラッシュで人がごった返し、その波に押されるように歩き続けて。
電車内は冷房が効いている筈なのに、隙間なく人が詰まっているから暑苦しかった。

電車から抜け出しても学校までの道のりで汗が吹き出てくる。

なんとか学校に着いて、職員室に入れば涼しくて生き返る。
でも自分の机の上には大量に積み上げられた書類。

あぁ、終わらない！！！

声にならない声を出して、叫び出しそうなのを必死で堪えた。

気が付けば次は授業が入っている時間で、長時間座っていた椅子から立ち上がる。

職員室から出て廊下を歩いていると、体が浮いたような感覚を感じてふらつく。
荷物を床に置いて、壁に手をついた。

これ、やばいかな……

今はまだ授業中だから、廊下には誰もいない。
ふみのところへ行こうかと思ったが、次授業がある生徒逹に迷惑はかけられない。

…よし、今日一日頑張ろう。
早めに帰ってちゃんと寝れば治るだろう。

そう思って、荷物を持って立ち上がると同時にチャイムが鳴った。