子供のまま、痛いまま【吉沢亮】 (ページ17)

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辞書を保管している教室は保健室の廊下の突き当たりにある。
そこを歩いていると、保健室から出てきたふみとばったり会った。

『ふみ？』

「あれ、A。吉沢くんも、その荷物は？」

「辞書です。運ぶの手伝わされてます」

『重いからねー』

「…吉沢くんが通ったから、あんなに騒いでたのね」

二階の騒ぎは保健室まで届いていたらしい。

流石に、学校の王子を使うのはダメだったか。

吉沢くんを横目で見て、少しやり過ぎたと反省する。
抱えた段ボールはかなり重そう。

…いや、私も運んだんだけどね。

そのままふみと別れて、廊下の突き当たりにある教室へ入る。
長い間掃除されていない、倉庫代わりの教室の隅まで歩いた。

『はい、そこ置いて』

「うい、しょ」

ドサッと派手な音を立てて段ボールが置かれる。
その衝撃で埃が舞った。

「あー重かった…」

『お疲れ様。ありがとね』

吉沢くんの肩にポンと手を置いた。
と同時に、急に鼻の奥がむず痒くなる。

『…くしゃみ出る』

「え？」

息を吸い込んで、はっくしゅん、とくしゃみが出る。

『埃アレルギーだから。ここはアレルゲンの塊』

「…え、じゃあ早く出ないと」

背中を押されて、早足で教室を出てドアを閉める。
そんなに深刻ではないんだけど…と思いながらも、気遣いを素直に受け取った。

「…大丈夫？」

『うん』

授業の時間もあるだろうし、早く教室に戻らせる事にした。
私は今日の授業は全て終わったから、と背伸びをして職員室へと歩く。