子供のまま、痛いまま【吉沢亮】 (ページ15)

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ご飯を食べる二人と暫く話していたが、途中であることに気づく。
せっかくこの二人は遊びに来ているのに…

『私、邪魔してない？』

「いやいや、そんなことないですよ！」

「話してて楽しいし」

な、と目を合わせて微笑む二人。

いや、絶対気を遣わせてる。何やってるの私…

『ありがとう、でもやっぱり行くね。お邪魔しました！』

「邪魔じゃないのにー」

『いいから。バイバイ』

口を尖らせる吉沢くんと、その顔を見て笑っている神木くん。
二人に手を振ればちゃんと振り返してくれる。

…イケメンオーラが凄いな、離れても光って見える。

そんな事を考えながら、少し重い紙袋を持って帰路についた。

.

家についた頃には、辺りが薄暗くなっていた。

お風呂に入って髪の毛を乾かし、ソファーに寝転ぶ。
体力なくなってるな、と足の痛みを感じて思う。

ふと窓の外を見ると、雨が上がっていた。
何だかお酒が飲みたい気分になって、冷えた缶ビールを持ってベランダに続く窓を開ける。

湿気はあまり気にならなくて、雨上がりの匂いと、少し冷えた風が心地よかった。

ベランダと部屋の境になっている段に腰掛けて、ビールを開ける。
プシュ、と爽快な音が響き、一口飲み込んだ。

んー、美味しい。

子供の頃、好奇心から親の飲んでいたお酒を少しだけ飲んだ事があった。
母が幸せそうな顔をして飲むものだから、余程美味しいのだと思っていたけど。
始めて飲んだそれの味は、とても苦くて不味いものだった。

これのどこが良いのか。そう思っていたのに、大人になってからはやたら飲む機会が多い。

息を吐いて、真っ黒な空を見上げる。
分厚い雲の隙間から見えた星は、東京の街の光に遮られて、輝くのを諦めているように思えた。
飛行機の赤く点滅する光が、星を隠しながら移動していく。

何故か虚しくなって、また一口ビールを煽った。

曲げた足を伸ばし、目を閉じる。
夜の風が頬を撫で、乾いた髪を揺らした。
鼻唄を歌えば、昼間より静かな街にやけに響いた。

この曲は…倫也の好きだった曲か。

昔、彼が歌っていたのを思い出す。
ずっとその曲を歌っていたから、私も覚えてしまった。
懐かしくなって口ずさんだ。

缶が空になる頃には、23時を回っていた。
晴れていた空は雲で隠れ、遠くから雨の音がする。

立ち上がって部屋に入ると、ポツポツと雨が降りだした。

『タイミング良……』

思わずそう呟いて、窓とカーテンを閉めた。