No.1【東海】 (ページ46)

今日:4 hit、昨日:60 hit、合計:65,442 hit

46. ページ46

sideA

レストランからでて、岡崎に戻ってなんとなく公園に行ってベンチに身を寄せ合って座る。

A「寒いね。凍えそう」

虫「くっついてたらあったかいやろ」

そう言いながら、太紀くんは私の手を取る。

虫「同じ大学行けたらさ、２人で大学の図書館巡ったりしようね。サークルとかも色々あって楽しそうだよね、Aと一緒のとこ入りたいな。」

言わないと…

ああ、この幸せな時間が壊れなきゃいいのに

時間なんて止まってしまえばいいのに

A「あ、あのね、太紀くん…」

虫「どうしたかや？」

私の真剣な顔を見て太紀くんが心配そうな顔になる。

A「私ね、東京の大学いく。だから太紀くんと同じ大学には行けない」

言ってしまった、泣いてしまいそう。

虫「なんで？」

A「親が転勤することになっちゃって東京行くから着いて行こうと思ったの。それに、私、元々そこまで頭良くないし、絶対受かりそうなとこ受けたいなって思って…」

虫「一人暮らしすればいいじゃん？それに、Aなら受かるよ、こんなに努力してきたのに諦めるなんてもったいないよ」

太紀くんが悲しそうな顔で言う。

A「ごめんね。もう決めたことなんだ」

虫「お前が中途半端に投げ出すやつだと思わなかった。そんな風に中途半端に生きてると弁護士にすらなれねーよ。見損なったわ」

A「太紀くんには私の気持ちなんてわかんないよ！」

虫「わかんねーよ。そうやって逃げるような奴の気持ちなんてわかりたくもない」

太紀くんは怒ってしまって、

私はごめんねって言うしかなかった。

　
虫「もう、帰るわ、じゃあな」

太紀くんはいなくなってしまった。

私はそれから1週間ぐらいずっと泣いていた。

太紀くんに会うのが怖くて、図書室にもずっと行けなかったし、彼に会うこともなかった。

私は東京の大学への進学が決まった。

卒業式の日に最後くらいと思って図書室に行った。

彼はいなかった。

だけど、私の高校3年間の思い出の場所に何か残しておきたくなって

彼が読むはずもないけど、

太紀くんと会うきっかけをくれた本の最後のページに

『あなたに出会えて幸せでした。ありがとう。』

と書き残した。