No.1【東海】 (ページ34)

今日:54 hit、昨日:0 hit、合計:65,432 hit

34. ページ34

side虫眼鏡

彼女が急にスタジオに来て、どうすればいいかわからなかった。

焦った僕は冷たい態度をとってしまった。

彼女は僕と視線があっても、余裕な顔をしていて、それがさらに僕をイライラさせた。

出身高校を聞かれても、表情を変えることなく、嘘をついていて

僕の知らないAを見せつけられたようで、悲しくなった。

混乱しているうちに、てつやが彼女を送って行くとか言い出したから

ここで一歩踏み出さないと2度と彼女に会えない気がして、適当なことを言って彼女を送っていくことにした。

昔の彼女と話したいと思って、嘘をついた理由を聞いたら

A「18までの私の過去は消したんです。だから、岡崎にいた頃の私はもういません。」

と、きっぱり言われてしまった。

僕は柄にもなく

「そっか…でも、僕の中ではずっと玲奈ちゃんじゃなくてAとして記憶は残ってるよ」

と言ってしまった。

彼女は泣き始めてしまって、

あの日も僕は彼女を泣かせてしまったことを思い出した。

ああ、僕も彼女も何も10年前から変わっていない。

だけど、変わっていないことを認めようとしない君を見ていると辛くなってしまって

僕は彼女の涙を拭った。

彼女はすぐに我に返ったように、車から飛び出していった。