他校の文化祭へ彼氏を作りに行く【黒尾鉄朗】

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「……秒で彼氏とか、ふざけてんじゃねーよ」



ベッドに寝転んで、もう一度あの記事の画像を開いた。
風呂に入ってしまえば、元通りのいつもの私が戻ってくる。



再三怒りを覚えた「ただしかわいい子に限る」の注意書きが欠けていることも、なんだかどうでもよくなってしまった。



畢竟、あんな記事は当てにしない方がいい。
あんなので告白して彼氏作ったって、秒で別れてしまうオチが待っているに決まってるじゃないか。

もう一度斜め読みした記事を、はっ、と鼻で笑った。


可愛い子ではないわたしにとっては、黒尾さんとひと月後にもう一度会えるという事実があるだけで奇跡なのである。





――そうだな、春高予選のときにもう一度会って、それで。
張りぼてのかわいいを全部崩してしまった私をなお、彼が優しい子、いい子だと評して受け入れてくれるのなら。


それなら、私も少し頑張ってみようか、なんて。



ちょっとだけ卑屈なのをやめてみようか、と催事の熱に浮かされたままの頭で考えてみた。
だって、自分を引き立て役などと卑下するなと言ったのは、黒尾さんなのだ。




「秒で」は無理だけど、「いつか」。





「なーんて、ね」




冗談めかして独り言ちてから、記事を閉じた。
せめてこの伸ばしかけのボブが寝ぐせで跳ねない方法はないだろうか、なんて検索をかけてみる。



スクロールしながらぼんやりと画面の文字を追っていたら、ぴこぴこ、という通知の音がした。





赤葦京治急にごめん、黒尾さんって分かる?
Aの連絡先知りたいって言ってるんだけど、教えていい?




「……、まじか」






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