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深澤「やっぱさ、少しは好意あんじゃないの？ Aさんに」
楽しそうなふっかと目が合って、俺は視線を逸らした。
深澤「Aさん、照とお似合いだと思うけどねー。大人しそうで、ふわふわしてるっつーか……なんかお嬢様って感じしねぇ？」
「……知らねぇよ」
深澤「連絡先は？ 聞いてないの？」
首を横に振ると、ふっかは大袈裟に溜息をついた。
横目で見遣ると、呆れたように眉を下げるふっかの表情が視界の隅に映る。
深澤「いくら同じ大学っつってもさ、学部が違うともう会える機会なんてねぇよ。少しでも気になんなら、連絡先聞いといた方がいいって」
「別に気になって……」
ない、と即答できない自分に戸惑う。
昨日初めて会っただけの奴、それなのにその声や表情をわりと鮮明に思い出せる。
深澤「ほらな、気になってんじゃん」
「気になるっつーか、目を離すのが心配なんだよ。放っておけねぇっていうか……」
深澤「それ、もう好きじゃないの？」
「違う。好きとかじゃない」
そういう気持ちは本当に全くなくて、気になるだけ。
小さな声でおずおずと自己紹介をした時も、周りを気にしながら居心地悪そうにしている姿も。
話しかけられて愛想笑いしているところも。
生きづらそうだな、って見ていた。
深澤「じゃあ、連絡先聞きに行こ」
「……なんで、」
深澤「まずは仲良くならないと始まんないっしょ」
「でも、あいつ……彼氏いそうだった」
深澤「……マジ？」
わざわざ駅まで迎えに来た、幼馴染とか言ってた奴。
人当たりは良さそうだったけど、なんか牽制されてるような圧を感じた。
深澤「まぁまぁ、それは後で考えよ。断られたら潔く諦められんだろ」
「はぁ……お前、絶対楽しんでんだろ」
ふっかの見世物になってるみたいで腑に落ちないけど、ほんの少しだけ緊張している自分がいた。
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作者名：ななせ | 作成日時：2024年3月10日 17時
