初恋を始めましょう (ページ15)

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「どうして急に？」

「……もっと自分に自信を持ちたくて」

いい意味でいつものAとは違うように見えた。
何か心を動かすようなことがあったんだろうか。

「ほら、私……いつも途中で投げ出してたじゃない？大学受験も、私がもっと頑張ってたら今頃亮平と同じ医科大学に入れてたかもしれないのに」

「あの時も充分頑張ってたでしょ」

「うん……、だけど……もっと自分を好きになりたいの。岩本さんが、人はいつでも変われるって背中を押してくれたから！」

いつか、こんな日が、くるんじゃないかと思っていた。

彼女を変えたのは、紛れもなく彼だ。
昨日初めて会ったばかりの男が、引っ込み思案な彼女を変えた。

「俺も応援してるよ。変わりたいって気持ちは、大事だからね」

それがすごく悔しかった。

きっとAの瞳には彼しか映っていなくて、それがやがて" 恋 "になって育っていくのだろう。
気付くのはもう少し先になりそうだけれど。
その時、俺はただ黙って片思いを腐らせていくだけなのかな。
好きな人の幸せが、自分にとっての幸せだと。

……いや、そんなのは綺麗事だ。

誰だって、自分が幸せにしてあげたいと思う。

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