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「もしかして、あんたも数合わせで呼ばれたクチ？」
「えっと、あの……はい。……あなたも？」
" あんたも "と聞くから、そうなのかな。
そういえばこの人も、誰かと話すわけでもなく、一人でしかめっ面をしていたっけ。
「ん、騙されて連れてこられた。ふっかに」
「……ふっか？」
「さっき、隣の奴に話しかけられてたろ。あいつに美味しいタピオカの店に連れてってやるって言われてついてったら、合コンだった」
「タ、タピオカ？」
タピオカが好物なのかな、意外。
私が首を傾げていると、彼ははっとしてからすぐに目を逸らした。
そして注いだばかりのアイスティーを一気に飲み干す姿に、ぎょっとする。
なんで今ここで飲んだの……！？
「……なぁ、一緒に抜け出さねぇ？」
「……え？」
「あんた、もう戻りたくないんだろ」
「……そ、そんなことは……」
「ずっと愛想笑いしてて楽しそうに見えなかった」
その言葉がグサッと刺さる、ちょっとだけ痛い。
図星すぎて、言い返す言葉もないんだもん。
「あんたは外で待ってて。荷物持って来るから」
何か言う前に、彼は部屋へと戻って行ってしまった。
待っていた時間はほんの数分で、彼は私の荷物も抱えて割とすぐにやってきた。
「ありがとうございます」というと彼は視線を合わせるだけで、特に何も口にしなかった。
前を歩いていく彼の背中をそそくさと追いかける。
あれ……ちょっと待って？
一緒に抜け出そうって言われたけど、これからどこに行くんだろ。
漫画とかでよく見る展開だと……。
ま、まさか……ホテ――！？
「なぁ」
「あ、あの……！ すみません、私そんなつもりではなく……っ！ も、もし……ホ、ホテルなどに連れ込む気なら、」
「駅、一緒？」
「……え、駅？」
「ん、俺こっち。あんたも一緒の駅？」
「あ……はい、一緒です……」
は、恥ずかしい……！
あまりの恥ずかしさに自分の頬が熱くなっていくのを感じた。
そんな私を見て彼は首を傾げていたから、きっとさっきの私の発言は聞いてなかっただろう……と思いたい。
「一緒にいた女の子、友達？」
前を歩いていた彼が、私の歩幅に合わせて隣に並ぶ。
「いえ……。同じ文学部ってだけで……仲がいいわけではないです。今日、たまたま誘われたってだけで……」
「やっぱり。なんか系統が違うと思った」
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作者名：ななせ | 作成日時：2024年3月10日 17時
