一緒に抜け出そう ページ1
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ああ、やっぱり誘いに乗るんじゃなかった。
柄にもないことするものじゃない。
歌いながらわいわいと盛り上がっているみんなを一瞥する。
あまりにも手持ち無沙汰で、グラスを手に取りウーロン茶を喉に流し込む。
さっきから、この動作の繰り返し。
私、完全に浮いてるよね……。
グラスは完全に空になってしまって、私のお腹はウーロン茶で膨れてしまった。
「ね、Aさんは歌わないの？」
私の隣に座った男の人は、えっと……なんて名前だったかな。
空になったグラスを握りしめながら、おずおずと答える。
「歌うの、苦手なので……」
「あ、そうなんだ。Aさん、合コンあんま乗り気じゃなかった？」
「……、えっと」
「ん？」
カラオケルームは爆音の音楽と楽しそうな歌声で、私の声をかき消してしまう。
男の人が顔を寄せて聞き返してきて、距離感の近さに固まってしまった。
「わ、私……ドリンクバー、取ってきます！」
思わず飛び出してきてしまった私は、ドリンクバーの機械の前で大きな溜息をついて項垂れた。
もう帰りたいな……。
でも、途中で帰ったら印象悪いだろうし。
もんもんと考えながら、またウーロン茶のボタンを押す。
合コンに行かない？って誘われたのは、今日の講義が終わった後で。
同じ大学の経済学部の人との合コンだと聞いた。
いつも大学が終わると、近所の大きな図書館で読書するのが日課だった。
誘ってきた同じ文学部の女の子達は友達と呼べるほど仲がいいわけではなくて。
一人足りないからどうしてもって頼まれて、なかなか断れない性分の私は流されるように頷いてしまった。
「……おい」
「……は、はい？」
振り返ると、背の高い強面の男の人が立ってて。
あ、この人も合コンに参加してた人だ。
「……溢れてるけど」
指を差された先を見遣ると、グラスからだらだらと溢れているウーロン茶。
「えっ！？ わっ、やだ……！」
慌てて指を離してあたふたしている私の横で、彼は冷静に新しいグラスをトン、と横に置く。
「勿体ないけど、新しいやつに代えた方がいいと思う」
「そ、そうですね……ありがとうございます。……、」
用意してくれたグラスを取る気になれず、気まずい空気が流れる。
それを察したのか、彼は用意していたグラスを手に取って自分用にアイスティーを注いでいた。
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作者名：ななせ | 作成日時：2024年3月10日 17時
