【夏目友人帳】嗚呼、あなたは (ページ9)

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冷たくて甘いページ9

「買ってきましたよ…」

俺がソフトクリームを買ってる間に

Aさんと妖たちは木陰の中に移動していた。

『ありがとう夏目』

「いえ……」

ソフトクリームをAさんに渡しながら

………俺、パシリじゃないか？

なんて思ったけど

そんな俺の考えは妖たちにとってはどうでもいいみたいで

『これがソフトクリーム…！』

『冷たくて甘いソフトクリーム！』

「うわっちょ……落ち着け！」

ソフトクリームを持つ俺のほうに

妖が俺の頭に二羽飛び移ってきた。

『ほう……冷たいな！それに甘い！』

『むむ！体に染み渡る冷たさ…！』

「もっとゆっくり食べろよ…」

Aさんの方をちらっと見ると

『A！うまいなこれ！』

『そうねぇ』

なんてゆったりしたものだ。

『夏目』

「はい？」

『ありがとうね、本当に』

そのときのAさんの表情とか

言い方とか

雰囲気とか。

ソフトクリームひとつに対して

あまりにも似つかわしくない気がした。

「………いえ」

だから俺は

その一言を返すだけで精一杯だった。