【夏目友人帳】嗚呼、あなたは (ページ11)

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不思議ページ11

『今日も一日ありがとう、夏目』

日が傾き、

ほんの少しだけ暑さが和らいだ頃。

「いえ、楽しかったです」

Aさんがいう、デートというものが終わる頃になった。

『我々も中々楽しかったぞ！』

『人間の考えた食べ物はうまいんだな！』

「はは、よかった」

妖たちも満足そうで

Aさんの頭の上ではしゃいでいる。

『じゃあ夏目、来週は山登りよ！

でも本格的なものじゃないから……散策っていうのかしら？』

「どっちにしろ一日山に登るんですよね…」

『当たり前じゃない。

集合は、そうね…………十時に学校の校門でどう？』

「わかりました」

正直憂鬱でしかないけど…。

『決まりね！じゃあね夏目』

「あ、家まで送っていきますよ」

『平気。夏目の家と反対方向でしょ』

「けど、」

女の人を一人で帰すわけには……。

それに暗い夜道はただでさえ物騒で

おまけに妖にでも絡まれたら………。

『ふふ、心配性の夏目。

夜道のことや妖のことを警戒してるんでしょ』

「当たり前です！

女の人の一人歩きはただでさえ危ないんですよ」

『お母さんみたいね』

「なっ…」

その一言で

ほんの一瞬怯んだ隙に

Aさんは走り出してしまった。

「ちょ…！」

呼び止めようとしても

どんどん遠ざかるその人は

くるりと振り返った。

『ご心配ありがとう夏目ー！

もしピンチになったらこの子達に助けてもらうわー！』

こちらに体を向けながらも

進行方向は真反対のまま。

自分の頭の上にいる妖たちにぽんぽんと手を置いて

彼女はそう言った。

『さらばじゃ人間の子よー！』

『また会ったら今度は饅頭というものを食わせろー！』

『Aのことは心配いらんぞー！』

もしかしたらあの妖たちともう会えないのかもしれないんだ。

なぜかふと、そう思った。

「ああ……また、会えたらいいな」

それからAさんがひらりと身を翻して

遠ざかっていく。

ひらりひらりと舞うようなそんな姿に

不思議と目が離せなくて

見えなくなるまで俺はAさんの姿を見つめ続けていた。