【MSS.P】ちらりずむ

第48話 ページ48

｢ほら、上向けって｣
｢無理です｣
｢こっち、ほら月が綺麗だよ｣
｢いやです｣
｢クソアマ｣
｢唐突な悪口！！｣

さっきからあろまさんがしつこい。
どうしてこんなに顔を見たがるんだ！やめてくれ！もうクソアマでいいから！！

｢そんなに俺の顔がタイプだった？｣

笑いを堪えるような、ちょっと高めの声にぶんぶんと首を横にふる。
違う、違います！！多分！！

｢‥‥は、恥ずかしいだけです｣
｢別にいいじゃん、写真も撮ってるし｣
｢あれは寝顔だから！！てゆかちゃんと消しましたよね！？｣
｢いや？｣
｢もうやだ！！｣

くそ！なんて意地悪なんだ！！
歩きながら、恥ずかしさに唇を噛む。うう、早く家についてくれ。


｢あ｣


不意に、あろまさんが声をあげた。
え、と見上げると。

ニヤリとした色っぽい顔があって。



｢やっと見た｣



しまった、こんな古典的な罠にかかるとは。

｢‥‥卑怯者｣
｢こっちは罰金払わなきゃいけねーんだぞ、これくらいの憂さ晴らしぐらい許せ｣
｢わたしに当たるのやめてもらえますか！！｣

あははと笑うあろまさんは楽しそうだ。
なんだ憂さ晴らしって。ちきしょう悔しい。


｢なんだ、普通にかわいい顔してんじゃん｣


笑いながら、なんともないような流れで言われた。


なんでそんな顔で、そんなこと言うかな。


｢‥‥普通です｣
｢もっとブッサイクなのかと思ってた｣
｢ぶっ飛ばしますよ｣
｢冗談だって！｣


あろまさんの後ろにある月が、まんまるでとっても綺麗だな、なんて、少し切なくなった。








｢ここで大丈夫です｣


街灯の下で立ち止まる。

｢ちけーの？｣
｢もうそこです。こんな時間にすいませんでした｣
｢お詫びに罰金肩代わりする？｣
｢しません｣

最後までふざけたこと言いやがってこいつ‥‥。

でも送ってもらったことには心から感謝。
未だに少し動悸のする胸を抑えて、ありがとうございます、とひとつ頭を下げる。


｢週末の収録もよろしくなー｣
｢こちらこそ！楽しみにしてます！｣
｢‥‥つかさ、｣

言いかけて、口ごもるあろまさん。
ん？と首を傾げると、あろまさんはちらりとわたしを見たあと、地面に視線をうつす。


｢タメ語でよくね？｣


言われて、デジャブを感じた。

｢‥‥えおえおさんもおんなじこと言ってた‥‥｣
｢まじかよ、うける｣
｢まぁ、そのうち慣れてきたらということで｣

うむ、これが一番差し障りない。
あろまさんは、おう、と短く返事をして、笑っていた。


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