【MSS.P】ちらりずむ

第41話 ページ41

どうやら彼らは、解散になっても挨拶をしにこない無礼な後輩にお仕置きするために楽屋に突入してきたようだ。

そしたらそいつは寝ていて、挙句の果てには彼氏と勘違いされてしまったと。

｢すいませんでした｣
｢もっと誠心誠意こめて｣
｢ごめんなさい｣
｢もっと可愛く！｣
｢‥‥ごめんちゃい｣
｢もっと可憐に！！｣
｢もういいでしょ！！｣

げらげら笑う彼らを尻目に、リュックを背負う。
なんでこいつら人の楽屋でお菓子広げてくつろいでんだよいい加減にしろ。はよ帰れ。

｢帰らないんですか？｣
｢いやほら、俺らは装備外さないと帰れないから｣
｢めんどくさ‥‥｣

FBさんがあろまさんのお面とえおえおさんのフードを指さしていたので、はぁ、とため息をつく。

そんなにわたしに顔を見られるのが嫌なのか。たった500円のために。わたし500円以下かよ。

｢Aちゃん帰るのー？｣
｢はい、今日もありがとうございました！わたしからご挨拶伺わずにすみません｣
｢いいっていいって、気を付けてね！！｣
｢またな｣
｢彼氏作れよー｣
｢うるさ！｣

あろまさんの最後の一言絶対いらない。

わたしはひとつ頭を下げて、手を振る彼らに背を向けた。









自宅に戻り、すぐさまパソコンを起動する。

｢‥‥(今日も楽しかった)｣

暑苦しいマスクを外して、はぁ、と天井を見上げた。
やはり彼らとの実況は文句無しに楽しい。
素でいられるというか、身を任せられるというか。

一気に4人も、お兄ちゃんが出来た気分だ。

｢おっさんだけど｣

先日アップしたえおえおさんとの動画を確認すれば、


『兄妹実況(無血縁)』
『和み回』


そんなタグが付けられていて笑ってしまった。どうやら観ている側にもそう思われているらしい。

しかし、当然の如く、みんな同じ感覚かと問えば、そうではなくて。


『ブスのくせに調子乗るな』
『えおえおに近付くな』
『幼児体型のくせに』


ツイッターのDMには、そんなメッセージが定期的に送られてきている。

百歩譲ってブスはいい、だがしかし幼児体型は訂正しろ。てゆか関係ねーだろ！

｢まぁ、別にいいけどね｣

気にしてたらキリがない。
多少ムカつくが、前ほど落ち込まなくなった。

わたしはわたし。

｢さてさて、編集しますか｣

今日アップ予定のものはないが、ストックの動画を編集しなければ。悩んでいる暇なんてない。今はただ、我武者羅に突っ走るのだ。


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