第29話(A side) ページ29
パシャッ。
カメラのシャッターをきる。
フレーム越しの猫は、くわ、と欠伸を噛み殺した。
｢(惜しい、今のが撮りたかった)｣
それにしても今日はいい天気だ。
部屋にいてもやることないし、面白いアニメもやってなかったので一眼レフを片手に外に出た。
何かいい被写体はと探しているが、ここらはいつも通ってる道なのでなんら面白いものもないかと思いきや、なかなかシャッターチャンスは転がっている。
｢(一通り満足したらアンテナショップ巡りでもするかな)｣
充実した休日である。
目的もなく、すぐそばの森林公園に足を運ぶ。なんかいいものが撮れそな気がする。
昼時の公園には、ベンチに座りサンドイッチ片手に談笑するOLや、ちょっとした広場でサッカーをする子ども、小さな噴水の淵に腰掛け目を閉じるおばあちゃんなど、穏やかな光景が広がっている。
｢(‥‥‥‥ん？)｣
ふと目を向けると、違うベンチに視線を奪われた。
1人のOLが、お弁当と箸を持ったまま眠っている。
こくりこくりと船をこぐような頭の動き。
そしてそのすぐ隣には、彼女に寄り添うように、1匹の猫が足を折りたたんで寝ている。
お昼寝するOLと猫。
なんという癒し。
もうその組み合わせだけでお腹いっぱいです。
｢(お疲れさんです)｣
パシャッ。
迷わずシャッターをきった。
うん、やはり公園にきて良かった。
1度写真を見直すため、そのOLさんとは少し離れた向かいのベンチに腰掛ける。
｢(‥‥もう一枚撮っとこ)｣
もう一度一眼レフを覗き込んで、
｢(あ、起きた)｣
OLさんが起きてしまった。
さっとカメラを降ろして見てないふりをする。まぁ一枚撮れたからいっか。
そしてちらりとそのOLさんを盗み見ると、隣の猫に驚いて小さく肩を揺らしていた。そしてお弁当の存在に気付き、わっ、と小さく声を上げて、ずり落ちてしまいそうだったお弁当をさっと抑える。
見てて面白い。
ぷるるるる。
ケータイが鳴った。
｢(俺のじゃない)｣
やがてOLさんは慌ててケータイを取り出し、耳に当てる。
｢はい、はいっごめんなさい！すぐ！すぐに戻りますので！はいっ！｣
もしかして寝過ごしたのか？
いやしかし待てよ、この声どっかで‥‥？
電話を切ったOLさんと目が合う。
しまった、見つめすぎた。
OLさんはパッと視線を逸らすと、やはり慌ててお弁当をしまって席を立つ。
走り去るその背中を見て、俺はひとつの顔を思い出した。
｢‥‥‥‥ハジメちゃんじゃね？｣
→
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こばやし(プロフ) - うるみさん» コメントありがとうございます！書いてる本人もちょっと笑ってました！これからも頑張ります！ありがとうございます！ (2017年5月15日 23時) (
レス) id: 110986f160 (このIDを非表示/違反報告)
うるみ(プロフ) - どうしてくれるんですか！腹筋崩壊したじゃないですか！あなたは神ですかｺﾉﾔﾛｰ!面白すぎ！ (2017年5月14日 16時) (レス) id: 3e99147b7d (このIDを非表示/違反報告)
こばやし(プロフ) - のあさん» コメントありがとうございます！1番だなんて！！なんと嬉しいことでしょうか……！大変励みになります！このままもりもり書き進めてゆきます！頑張りますっ！ (2017年4月29日 4時) (レス) id: 110986f160 (このIDを非表示/違反報告)
のあ(プロフ) - 新作楽しみにしていました！このジャンルではこばやし様の作品が1番好きです！更新楽しみにしています！ (2017年4月29日 3時) (レス) id: 77fd8cb64d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：こばやし
| 作成日時：2017年4月29日 1時
