第19話 ページ19
「‥‥失礼します」
彼らの視線の意図に気付いて、後ろを向き、視界に彼らがいないことをしっかり確認してペットボトルに口をつける。
「あーあ、気付かれたか」
「もうちょいだったな」
「惜しいことをした」
「あろまが余計なこと言うから」
後ろから変な会話が聞こえる。
てゆかみんなしてなんなの。自分のこと棚に上げてわたしの顔だけ見ようとしてたの。馬鹿なの。
まさかあのクールなえおえおさんまで乗っているとは思わなくて驚いた。
飲み終わって、マスクをがっちりあげて、また振り返る。
「さ、始めましょ!」
何事も無かったかのように手を叩けば、ちぇー、と唇を尖らせたきっくんさんが画面に向き直った。
「見たかったなーAちゃんの顔ー」
「そんな大したもんじゃないんで」
「じゃあいいじゃん!」
「別にいいですよ」
「え、まじ!?」
きっくんさんとの会話に、FBさんが入ってきた。
よく見ればあろまさんとえおえおさんもこちらを見ている。いやだから、お前ら2人!いい加減にしろ!
「いや、きっくんさんだけです」
「ええーーーなんでーー!!?」
「うるさ!だってフェアじゃないんですもん!!あなたたち!!」
「いえーーい俺だけーー!」
「ずーるーいーー!!」
言うて、生放送の収録からの流れで、気恥ずかしくてマスクをしていただけだ。晒されるようなことさえなければ、見られて困るもんでもない。
たかだかこんな小娘の顔ごときに、なにをこんなに悔しいことがあるんだ。
「やっぱさ、実況者同士の顔合わせの時ってめちゃくちゃ緊張するよね」
あろまさんの一言に、そんなもんなんだ、ぐらいの感想しかなかった。だってわたしは彼らが初めてだし。
「それ!なんだかわかんないけどドキドキするよねー!」
「いや、きっくんはもとから顔出てるからそんなでもないっしょ」
「いやいや、見る方も見る方で緊張するもんよ?」
そんなことを言いながら、きっくんさんはコントローラーを離してわたしの傍に膝立ちで寄ってくる。
「はいっ、はいAちゃん、後ろ向いて!」
「‥‥確かに緊張するかも」
「でしょでしょ??」
言われるがままに後ろを向いて、急にばくばくとなり始めた心臓を感じて、見てもいいですよなんて言った数分前の自分を殴りたくなった。やばい、緊張する。
目の前には、きっくんさんしかいない。
くそ、無駄にイケメンだ。
急に恥ずかしくなってきた。
「‥‥‥‥はい」
諦めたように、マスクを顎の下までおろした。
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こばやし(プロフ) - うるみさん» コメントありがとうございます!書いてる本人もちょっと笑ってました!これからも頑張ります!ありがとうございます! (2017年5月15日 23時) (レス) id: 110986f160 (このIDを非表示/違反報告)
うるみ(プロフ) - どうしてくれるんですか!腹筋崩壊したじゃないですか!あなたは神ですかコノヤロー!面白すぎ! (2017年5月14日 16時) (レス) id: 3e99147b7d (このIDを非表示/違反報告)
こばやし(プロフ) - のあさん» コメントありがとうございます!1番だなんて!!なんと嬉しいことでしょうか……!大変励みになります!このままもりもり書き進めてゆきます!頑張りますっ! (2017年4月29日 4時) (レス) id: 110986f160 (このIDを非表示/違反報告)
のあ(プロフ) - 新作楽しみにしていました!このジャンルではこばやし様の作品が1番好きです!更新楽しみにしています! (2017年4月29日 3時) (レス) id: 77fd8cb64d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:こばやし | 作成日時:2017年4月29日 1時