第42話 ページ43
｢言ったろ？僕は思い通りにならないのが一番嫌いだって｣
やがて男は、ネクタイのすぐ横、左胸についた赤いブローチを指差す。
｢このブローチには特殊な心音センサーが内蔵されていてね。このブローチから半径5センチ以内にある心臓が止まる時、この爆弾が弾ける仕組みになってる｣
つまり。
｢僕が死ねば、お前らも木っ端微塵だ｣
狂っていると、その笑顔を見て、思った。
｢僕の思い通りにならない時、それは僕が死ぬ時だよ｣
わかったらさっさと銃を降ろせ。
男の声がする。
えおえおとFBが、ゆっくりと銃を降ろしていくのが横目に見えた。
正直、わたしはもう終わりだと思った。
わたしが行けば、彼らは、助かるのか。
確証がない上に、かと言ってどうにか男を倒したところで、みんな死ぬ。
だめだ。
完全に、してやられた。
もうどうにもならない。
｢装備を全て外して、こっちにこい｣
もう涙も出なかった。
｢‥‥行くな｣
えおえおの小さな声が聞こえる。
もう無理だよ、えおえお。こうするしかないよ。
弾や拳銃の入ったベスト、同じように重たいボトム、救急セットが入ったウエストポーチ。
一つずつ、全て脱ぎ捨て、床に置く。
靴も脱いで裸足になれば、床は想像よりも冷たかった。
｢その銃も、捨ててもらおうか｣
スパッツと背中の間に隠していたデザートイーグルも、言われてそっと取り出した。
『そいつはきっと、お前の守りたいもんを守ってくれる』
えおえおに渡されたこの銃。
｢‥‥えおえお｣
振り返らずに呼べば、後ろから布の擦れる音がした。
｢これ、返す｣
えおえおの方向に、後ろ向きで放り投げた。
｢‥‥A、｣
震えた声に振り返れば、わたしの顔を見て、驚いたような表情を浮かべていて。
｢‥‥みんなを、お願いね｣
それだけ言って、また、男に向き直った。
わたしの、守りたいもの。
守ってくれるんでしょ？
｢お別れの挨拶は済んだかい？｣
｢‥‥｣
返事をしないでいれば、ふっ、と鼻で笑ってから、男は右手を差し出す。
｢さぁ、こっちにおいで｣
わたしは、ゆっくりと、足を前に出した。
→
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 65人がお気に入り
お気に入り作者に追加
「オリジナル」関連の作品
この作品を含むプレイリスト ( リスト作成 )
この作品を含むプレイリスト 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
こばやし(プロフ) - わふうさん» 外しました。ご指摘ありがとうございます。 (2017年5月6日 20時) (
レス) id: 110986f160 (このIDを非表示/違反報告)
わふう - オリフラはずしてください (2017年5月6日 18時) (レス) id: bef332b0cb (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：こばやし
| 作成日時：2017年4月17日 19時
