第29話(K side) ページ30
星のない夜空を見上げる。
屋根の上から見るこの景色は好きだけど、少しだけ、悲しい気分になった。
｢‥‥(俺、ちゃんと生き残れるのかな)｣
正直、不安に押し潰されそうだった。
今まで何度も窮地を抜けてきた俺らだけど、今回ばかりは訳が違う。
相手は、本気で俺らを殺しにかかってくる。
事前にそれがわかっているくせに、こちらには相手の情報がまるで足りていない。
｢(こんな静かな夜が、あと何日かで終わるのかな)｣
俺らしくない、とは思いつつも、珍しく弱気になっている心が落ち着かない。
はぁ、とため息がもれた。
｢‥‥‥‥ん？｣
視界の端で、何かが動いた。
そちらに目を向けると、射撃場のほうからAが出てくるのが見えた。
あいつ、なんであんなとこから出てきたんだ？まだ傷は治ってないはずなのに。
見ていると、ふと目が合った。
あの距離で俺に気付くのか‥‥。
｢きっくん、こんばんわ｣
ほどなくして、Aがやってきた。
手招きしたのは俺なんだけど。
｢やほー、傷の調子はどう？｣
｢なかなかいい感じ。包帯変える時はめちゃくちゃ痛いけど｣
俺の隣に、膝を抱えて座り込む。
こうして2人で話すのは久々かもしれない。
｢きっくん、元気ないね｣
いきなり核心を突かれ、ふとAを見る。
｢‥‥そう見える？｣
｢うん、なんとなくだけど｣
不安？
そう聞かれて、目をそらした俺の反応でわかったのか、Aは少しだけ間を置いて、大丈夫だよ、と優しい声をあげた。
｢わたしもすごく不安だったんだ。これからどうなるんだろうって｣
｢‥‥Aも？｣
｢うん｣
でも、と続けるAの横顔は、うまく言葉に出来ないけど、俺の知ってるどのAよりも、凛々しくて。
｢みんながいるから、頑張ろうって思えたよ｣
その言葉に、少し泣きそうになった。
他の誰でもない、思えば今まで、誰のために戦ってきたのかを問いかけられているような気がして。
｢わたしが負けそうな時は、いつもみんなが助けてくれた。だから今度は、わたしが、みんなを守るって、決めたの｣
一切の迷いも感じさせないその瞳が、真っ直ぐ俺を見ていて。
｢殺すための武器じゃない、守るための武器だって、気付かせてもらったから｣
えおえおの受け売りだけどね。
困ったように笑うAは、いつものAなのに。
｢‥‥A｣
｢‥‥ん？｣
落ち込んでた俺が馬鹿みたいだ。
｢‥‥こっち、きて｣
→
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 65人がお気に入り
お気に入り作者に追加
「オリジナル」関連の作品
この作品を含むプレイリスト ( リスト作成 )
この作品を含むプレイリスト 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
こばやし(プロフ) - わふうさん» 外しました。ご指摘ありがとうございます。 (2017年5月6日 20時) (
レス) id: 110986f160 (このIDを非表示/違反報告)
わふう - オリフラはずしてください (2017年5月6日 18時) (レス) id: bef332b0cb (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：こばやし
| 作成日時：2017年4月17日 19時
