第26話(E side) ページ27
｢これ、やる｣
枕元に置いてあったそれを差し出すと、Aは大きな瞳をさらに見開いて、俺を見た。
｢こ、これ、｣
｢ほら｣
右手に持たせる。
｢お守りだ｣
それは、俺が愛用していたデザートイーグル。
お前を2度守り抜いた、自慢の相棒だ。
｢そいつはきっと、お前の守りたいもんを守ってくれる｣
そう言えば、Aの瞳は驚きから、強い眼差しへと変わる。
｢わたしの‥‥守りたいもの｣
迷いのない澄んだ瞳が、鈍く黒光りするそいつにうつる。
お前にしか、出来ないことがある。
お前だから、そいつを託せるんだ。
｢Aが使うならそのサプレッサーは外したほうがいい。重いし、なにより威力が少し落ちるからな｣
｢わかった｣
｢あと、少し手を入れてるから。ジャムりにくいが撃鉄の衝撃が他に比べて少し重いかもしれん｣
｢うん、大丈夫｣
静かに頷くAは、顔立ちが随分と大人びたような気がする。
やがて俺と目を合わせると、
｢大切にする｣
昔の面影を感じさせない、慈愛に満ちたような、けれど強い笑顔がそこにあった。
｢‥‥おう｣
少し照れくさくなって目をそらす。
人っていうのは、こうも変われるもんなんだなと。
嬉しい反面、少し怖くもなった。
なんだか、置いていかれてる気分だ。
｢えおえおは、変わったね｣
｢‥‥え？｣
不意に言われて顔を上げた。
心の中を覗かれたような、変な気分になる。
｢出会ったときは、こんなに無気力で、こんなに生気のない人いるんだなと思ってたけど｣
おい、待て。
お前にだけは言われたくないぞ。
｢今のえおえお、めっちゃかっこいいよ｣
言われて、面食らった。
なんじゃそりゃ。
｢‥‥それは、どうも｣
｢まぁ、ベットの上で暇そうにしてるえおえおにしては、だけど｣
｢おい｣
からからと笑うAは楽しそうだ。
そうだ。
この先なにが待っていても、俺たちが、俺が守りたいのは、この笑顔だ。
ベットに寝そべって、だってなんもねーからつまんねーんだもん、なんて愚痴れば、
｢時間があいたら、またおしゃべりしに来るよ｣
そう言って席を立つ。
｢行くのか｣
｢うん、ちょっとFBに用がある｣
｢傷に障るからあんま動き回るなよ｣
｢はーい｣
またね。
扉が閉まって、部屋の静けさが戻ってくる。
｢(また暇だ)｣
何度目かもわからない天井を見上げると、さっきと少しだけ、見えるものが違う気がする。
俺も、少しずつ変わってんのかな。
→
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 65人がお気に入り
お気に入り作者に追加
「オリジナル」関連の作品
この作品を含むプレイリスト ( リスト作成 )
この作品を含むプレイリスト 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
こばやし(プロフ) - わふうさん» 外しました。ご指摘ありがとうございます。 (2017年5月6日 20時) (
レス) id: 110986f160 (このIDを非表示/違反報告)
わふう - オリフラはずしてください (2017年5月6日 18時) (レス) id: bef332b0cb (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：こばやし
| 作成日時：2017年4月17日 19時
