【MS.SP】不戦勝宣言【GTAパロ】 (ページ12)

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第11話(F side) ページ12

ひと通りの作業を終わらせて、ふう、とため息をつく。
昨日の件で、無事に資料は入手したものの、最重要事項である社長暗殺を目前にして、一番の戦力となるえおえおを手負いにしてしまった。これは非常にまずい。

どうしたものか、と頭を抱えながら、えおえおの部屋の前まで歩いていくと、うっすらと扉が開いているのに気付く。

｢‥‥？｣

そっと隙間から覗いてみると、えおえおが横たわるベッドのすぐ側に、Aが座っていた。
粗末なパイプ椅子に腰掛ける彼女の背中は、あまりにも小さくて華奢だ。

この背中に、俺たちが背負わせようとしたものの大きさは、罪深い程に残酷な物。

｢‥‥A｣

そっと扉を開けて名前を呼べば、彼女は声もなくゆっくりと振り返る。

｢‥‥FB｣
｢えおえおどう？｣
｢‥‥やっと、熱が下がって眠れたとこ｣

えおえおの状態は、あろまからなんとなく聞いていた。

負傷した昨日の夜から朝にかけて、患部から来る発熱に苦しんだそうだ。
あばら骨が一本折れているだけでも重症だが、話によると、その前に1発銃弾を受けているらしい。
幸いにも、防弾チョッキを着ていたため肌を抉ることはなかったが、それでもその衝撃は大きいもので、別のあばら骨にヒビが入っている状態だ。

復活には、当分かかるだろう。

｢‥‥わたしがいなかったら、こんな怪我しなくて済んだのに｣

Aが、静かに呟いた。

｢‥‥そんなこと、｣
｢あるよ。だって今まで、こんな大きな怪我なんてしたことなかったじゃん｣

食い気味に来るAは、どことなく苛立っているような感じで。

｢大丈夫だよ、あろまが、治してくれるから｣
｢そういう事じゃないよっ｣

声が、涙色になった。

｢わたしがいなければ、何事もなく、終わったのに、｣
｢‥‥A‥‥｣
｢えおえおじゃなくて‥‥わたしが怪我すれば良かったんだ、｣
｢A、｣
｢わたしが、いなければ、｣
｢Aっ！｣

泣きながら懺悔する彼女を見ていられなくて。
気付けば、力任せに抱きしめていた。

｢‥‥わたしなんか、いなくなれば、よかったのに｣
｢A、そんなこと言わないで｣

震える彼女の身体に、胸が傷んだ。
そんな、そんな言葉‥‥聞きたくないよ。

｢大丈夫、大丈夫だよ。えおえおは大丈夫｣
｢っ、えふ、びぃ‥‥っ｣
｢起きた時、きっとAの笑顔が見たいと思う。だから、笑っててよ｣

回らない頭で考えて、やっと出てきた言葉はそんなもので。

俺が、泣きたくなった。

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