第14話 ページ14
びっくりした。びっくりした！！
まさか大野君に告白されるだなんて1ミリも思ってなかったわたしは、えおえおさんの登場に心の底から感謝していた。
だって！あのまま2人きりだったら、わたし何を言ったらいいのかわからなかった！
｢店長ー、唐揚げのストックやばいっすよー｣
｢へ！あ、うん！明日やる！｣
しかし参った。どんな顔したらいいのか。
大野君はあれから変わらずいつも通りだし、えおえおさんもいつも通り美味しそうに食べてるし。
え？もしかしてさっきの白昼夢か何かだったの？なんて思い始めてきた。
うわーーー！！
泣きそうになりながらひたすら洗い物を片付けていると、
｢返事、急いでないっす｣
後ろを通った大野君が、小声で囁いた。
う、うわーーー！！！
急いでたら困るよ！！！(？)
反応できずに更にひたすら食器を洗う。
勢い任せにシンクに手を突っ込むと、
｢いだっ！｣
指を切りました。
よく見ると、どうやら下に重ねていた食器が重さで割れていたようだ。
哀れすぎてため息が出た。
｢動揺しすぎ｣
しかも見られた。いっそ死にたい。
｢‥‥絆創膏‥‥探してくる‥‥｣
情けない。ああ情けない。
とぼとぼと、レジ下の救急箱目指して歩く。
｢‥‥‥‥無いし｣
そしてこんな時に限って無い絆創膏。
もうやだ。
しゃがみこんで途方に暮れていると、指先からぽたぽたと血が床に落ちていく。余計な掃除が増えた。なんだか泣きそうだ。
｢切ったんですか？｣
真上から、声がかかった。
見上げると、カウンターから身を乗り出したえおえおさんがのぞいている。
｢‥‥少し｣
｢絆創膏あげましょうか｣
｢うぅ‥‥いいんですか｣
｢‥‥こっち来てください、ティッシュ持って｣
恥ずかしすぎて死にそうだったが、背に腹はかえられぬ。
言われた通りティッシュを持ってカウンターへ回ると、えおえおさんが財布から絆創膏を取り出した。
｢‥‥持ち歩いてるんですね｣
｢なんとなく入れといただけです｣
｢‥‥｣
｢‥‥血が｣
言われて、指を見る。
傷は深くないが、出血が思いのほか多い。
わたしは切り傷が日常茶飯事なので慣れているが、えおえおさんは気持ち悪くないだろうか。
そう思って慌ててティッシュで血を拭き取ると、えおえおさんが新たなティッシュで傷口を抑えぎゅっと圧迫する。
｢このあと、ちゃんと消毒してからこれ貼ってください｣
｢はい、ありがとうございます｣
｢‥‥(指ほっそ)｣
ため息が止まりません。
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作者名：こばやし
| 作成日時：2017年4月2日 20時
