きみの好きなやり方でキスして/A ページ10
俺の眉毛、それから額と上昇した手は、そこで少し止まって、ツツツとまた降下した。
「……口？」
「ん」
それまでの部位と異なり、一本の指で触れられるそこ。
閉じられた唇で返事をすると、Aの身体がもぞもぞと動いた。
「くち」
もう一度、確かめるように呟かれたそれに返事をする間もなく塞がれるそこ。
一瞬だけ。
少し触れて、確かめるだけのそれは、確かにAからのキスだった。
「っ……」
息を堪えるような声が聞こえ、Aが俺から少し間を取って、俯いたのが分かった。
暗闇に目が徐々に慣れてきて、微かにAの輪郭が見えてくる。
今、Aはどんな表情をしているんだろうか――。
恥ずかしくて悶えているのだろうかと思うと、その顔が見たくてたまらなかった。
「こっちむいて」
俯くAに呼びかけると、その身体が緊張したのが暗闇の中でも分かった。
「や……」
小さな拒否の言葉を発するが、今まで散々俺の身体を好き勝手弄んだんだ。
俺に同じようされる事に対しての文句は、受け付けるつもりはない。
「A」
俺は逃げられる前に、Aの腰に腕を回す。
優しく。けれど強く抱きしめた。
密着した身体から伝わる体温は、掌のそれとは打って変わって熱いくらいだ。
未だに俯くAの顎を持ち上げ、こちらを向かせる。
暗闇の中だが、確かに目が合った。
「あ、ろま……」
「うん」
それはさっきまでの確認の言葉とは違うだろうに、同じように相槌を打ってやると、安心したのか強張っていたAの身体から力が抜けた。
「愛してるよ」
そう囁いて、俺はAの唇に自らのを重ねた。
「……今度は、俺の好きにしていいよな？」
０時を越えた今からは――――。
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