【むしろ好き】/F ページ10
｢ちょっ、A、？｣
｢しーっ｣
わたわたと、慌てたように狼狽えるFBを押さえつけながら、侵入した部屋の扉を後ろ手に閉める。
スタジオの一角、暗く狭い、掃除用具室。
｢な、なに？なんなの？｣
｢しーってば！｣
普段は掃除の用務員さんしか出入りのないこの場所。もちろん電気のスイッチがどこにあるかなんて分からないから、真っ暗だ。
｢‥‥‥‥｣
｢‥‥‥‥｣
しばらくじっとしていると、目が暗闇に慣れてきた。
整理された掃除用具が並ぶこの部屋は、ただでさえ人ひとりが入るので精一杯の狭さ。ぴったりと身体をくっつけて、真上のFBの顔を見つめる。
｢ど、どしたの‥‥？｣
｢‥‥ちゅーして｣
｢‥‥‥‥は？｣
｢ちゅー、して｣
う、と、唇を尖らせて見せてやった。
FBは訳が分からないといった様子だ。
｢‥‥ここ、スタジオなんだけど｣
｢‥‥知ってるよ｣
｢そういうのは家でしようよ｣
｢いましたくなっちゃったの｣
｢あのですねAさん、物事には節度という物がありましてね｣
｢そういうのはいいからはやくっ｣
｢‥‥‥‥｣
うーうーと背伸びして、彼の首に腕を回しておねだりしてみる。
もういいや、めんどい。
｢あ、ちょ、｣
そのまま。
｢んむ！｣
｢ん｣
首に回した腕に力を入れて、慌てる唇に自分のそれを押し付けた。
｢ん、ちょっと、｣
｢んん｣
｢‥‥‥｣
少し抵抗されたけど、構わず噛み付く。
抱きついた首をぐいぐいと引き寄せながら、もっともっとと角度を付ければ、FBはようやく大人しくなった。
｢‥‥、｣
観念したように、彼が少し唇を開く。
嬉しくなってあむあむと下唇を噛めば、ぬるりと、舌が侵入してきた。夢中になってそれに応えながら、FBの足の間に膝をねじ込む。
｢‥‥こら、｣
｢ん、んん｣
これまた少し、抵抗を見せたFB。
やはり構わず彼の舌を追いかけ回す。
ややあって。
｢‥‥ぁ、ん｣
｢‥‥はぁ、｣
そのうち、押し付けていた身体をまさぐるように、大きな手が腰に回った。
｢‥‥‥‥、もう、あんたいつもこうなんだから｣
暗闇の中、熱くギラついた瞳で見下ろされて、ぞくりと背中を震わせたまま、笑ってみせる。
時々無性に、その目が見たくなるの。
｢‥‥でも、嫌いじゃないデショ？｣
｢‥‥‥‥おばか｣
がぶりと、首筋に噛みつかれる。
熱い吐息が籠る部屋の外の廊下から、今日のお昼ご飯について議論するきっくんとあろまの笑い声が聞こえていた。
END
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作者名：こばやし
| 作成日時：2017年9月24日 11時
