第6話 F ページ6
｢‥‥なにかっていうか‥‥A｣
｢‥‥‥‥A‥‥？｣
犬かなんかだろうと思っていた俺は、聞きなれない単語に首を傾げる。
A‥‥なんか、人の名前‥‥のような気もするけど。
｢あろまよりちょっと小さいくらいの、女の子｣
えおえお、とやらが、眠そうに垂れ下がった目を俺に向ける。なるほど、やっぱり人の名前か。
｢FBここに来るまでに見なかった？｣
｢いや、見てない、けど‥‥｣
｢んだよ使えねーな｣
｢ねぇさっきから酷くない！？初対面だよね俺ら！？｣
どうやらあろま‥‥という少年は、これが通常運転らしい。
躍起になってツッこむ俺に、｢あーだいじょぶだいじょぶ、だんだん慣れてくるから｣ときっくん‥‥だっけ？がカラカラと笑っていた。
｢次どっち行ってみる？｣
｢んー、あっちかな｣
｢まだ歩くのかよ‥‥｣
｢FBも手伝ってー！｣
｢え！あ、いいけど、｣
呼びかけられ、歩き出した彼らの後ろに付いていく。
不思議な、感覚だった。
｢FB暑くないのその服？センスないね？｣
｢べ、別に好きで着てるわけじゃねーし！！｣
｢民族衣装的な？｣
｢どこの部族から来た？｣
｢そういう訳でもねーから！！｣
初対面のはずなのに。
｢俺の古着やるよ！いっぱいあるし｣
｢え、べ、別にいいよ｣
｢きっくんの古着かー俺は無理だわー｣
｢ドクロとかめっちゃ書いてあるしな｣
｢なにそれ絶対やだ！！｣
｢なんだてめーら！ケチ付けんなっ！｣
まるで、ずっと友達だったみたいな。
｢あれ、戻って来ちゃった｣
やがて、少し開けた場所に出た。
きっくんの声に顔を上げれば、1軒の、小さな掘っ建て小屋。
｢もう帰ってるんじゃない？｣
｢ちょっと休憩がてら休むか｣
｢ねむい｣
｢‥‥‥‥｣
さも当たり前のようにその建物に向かって歩き出す三つの背中を尻目に、俺は少しの間、そこを動けないでいた。
たくさんの緑に囲まれた、さぁさぁと木々たちが囁いているような、静かな森のど真ん中。
明るい太陽からの日差しが、まるでスポットライトのように木々の隙間から差し込んでいて。
古びているけどどこか温もりが感じられる、二階建ての小さな木造の小屋。
子どもの頃夢見ていた、秘密基地のようで。
｢あ、FB、案内するよ！｣
｢！｣
振り返ったきっくんが、笑顔で手を挙げている。
｢俺たちの、秘密基地｣
悪戯に笑う３人と、すんと鼻をかすめた優しい木のにおいに、前のめりに、右足を踏み出した。
→
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 131人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を含むプレイリスト 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
こばやし(プロフ) - あるふぁさん» コメントありがとうございます！！良かった……思わずにこっとしてしまうような彼らの青春が書きたかったのです……この調子で頑張ります……っ！！ (2017年9月7日 17時) (
レス) id: 110986f160 (このIDを非表示/違反報告)
こばやし(プロフ) - うずらさん» コメントありがとうございます！！ヒエ‥‥神とは‥‥っ！！ちょっと夢要素薄めですが、お楽しみ頂ければ幸いです……っ！(´；ω；｀) (2017年9月7日 17時) (レス) id: 110986f160 (このIDを非表示/違反報告)
こばやし(プロフ) - カンナさん» レス遅くなり申し訳ございません……！！ありがとうございます！そう言って頂けると大変励みになります……(´；ω；｀)頑張りますっ！！！ (2017年9月7日 17時) (レス) id: 110986f160 (このIDを非表示/違反報告)
あるふぁ(プロフ) - ああぁ…にまにまするんじゃぁ…自然と笑がこぼれるんじゃぁぁ…O(:3 )〜 (2017年9月7日 17時) (レス) id: 9156d20097 (このIDを非表示/違反報告)
うずら(プロフ) - ｱ゛ｱ゛ｱ゛ｱ゛神作品じゃあ...更新待ってます|・ω・｀) (2017年9月4日 22時) (レス) id: 6e3abf552a (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：こばやし
| 作成日時：2017年8月16日 1時
