第17話 ページ17
くつくつくつ。
鍋の中の、浮かんでは弾ける気泡を眺めながら、小さくため息をつく。
｢‥‥(‥‥やっぱり、ダメかも)｣
いけると思ったのだ。
えおえおが毎晩のように、新しいわたしを発見してくれて。これなら、彼に温もりを伝えることが出来るって、思ったのだ。
でもどうやら、そう簡単にはいかないらしい。
『好きだよ、A』
戸惑いや悲しさで溢れた涙を見て、わかってるから、と、まるでわたしのせいじゃないよとでも言うように、優しく抱きしめてくれたえおえおを思い出す。
多分彼は、わたしの不感症に気付いている。
だからいつも、ここで、このキッチンで、探してくれていたんだ。わたしが暖かくなれる方法を。
｢‥‥(言わなきゃ)｣
きちんと、わたしの口から言わなきゃならない。
でも、えおえおを傷つけないように伝えるには、どうしたらいいんだろう。
ただでさえ��性行為��が前提のわたしの悩み。
内容も内容なので、友達にすら相談した事もない。というか、出来なかった。そんな事で悩むくらいの破廉恥な女だと思われたくない、とか。全く出来ない訳じゃないんだから良くない？なんて言われたらどうしよう、とか。
でも、他の人から見たらどうでもいいような事でも。
わたしにとっては、死活問題だ。
わたしは彼の熱を感じたい。
彼に同じものを与えたい。
でも、それは無理な事なのだろうか。
一生このまま、彼の熱を感じることが出来ないまま。
彼に、感じてもらえないまま。
朽ちてゆくのだろうか。
ガチャガチャ。
｢！｣
ぐるぐると巡る思考の最中、玄関から物音がした。
えおえおが、帰ってきた。
｢‥‥ただいま｣
｢おかえりー｣
ほどなくして聞こえてきた帰宅の合図に、わたしもキッチンから慌てて声をかける。
どんな顔をすればいいのかわからなくて、咄嗟に、鍋を混ぜてるフリをした。
｢‥‥いいにおい｣
やがてキッチンに顔を出したえおえお。
｢豚汁作ったよ。すぐ食べる？｣
｢食べる｣
｢えおえお君の大好きな、具沢山豚汁です｣
｢やったぜ｣
声のトーンは変わらないけど、顔を見ればわかる。めちゃくちゃ喜んでる。
わたしもわたしで、案外普通に話せた。良かった。
ふふ、とこぼれた笑みはそのままに、火を止めて、ご飯の支度に取り掛かった。
→
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灯火(プロフ) - もう既に完結していらっしゃる様ですがコメント失礼致します！すごく感情移入しやすい小説でした！感情の表現の仕方などとても勉強になりました！これからもがんばってください！ (2018年3月27日 4時) (
レス) id: bdfed69944 (このIDを非表示/違反報告)
るりも(プロフ) - こばやしさん» 細かい気持ちの動きなどがとても参考になりました！陰ながら応援しております！ (2017年8月27日 21時) (レス) id: 01f00a7c23 (このIDを非表示/違反報告)
こばやし(プロフ) - るりもさん» 毎度ありがとうございます！！えっと！！なんの参考にもならないど下ネタ小説でしたが！！なにかお役に立てれば幸いです！！(混乱)いつも暖かいご声援に救われてます、ありがとうございます……！！次も頑張りますっ！！ (2017年8月27日 18時) (レス) id: 110986f160 (このIDを非表示/違反報告)
こばやし(プロフ) - 金平糖@ラビが大好きリーフパイさん» 毎度お世話になります！！いつも心いっぱいご感想を頂けて、作者冥利に尽きる所存でございます……涙 多分すぐ新作も出てくると思うので、こらからも何卒よろしくお願い致しますっ！！(｀；ω；´) (2017年8月27日 18時) (レス) id: 110986f160 (このIDを非表示/違反報告)
るりも(プロフ) - 完結おめでとうございます！細かな情景描写や言葉の使い方がとても勉強になりました！また、読んだり作ったりすることが少ないジャンルの作品だったのでとても面白く、終わってしまうという寂しさが少しありましたが、次作品を楽しみにしています！ (2017年8月27日 15時) (レス) id: 01f00a7c23 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：こばやし
| 作成日時：2017年7月31日 7時
